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Macnaughton Lord Representation

劇作家で脚本家のピーター・シェーファーが6日、アイルランドのホスピスで息を引き取った。90歳だった。

シェーファーは生涯を通じて優れた戯曲を数多く遺したが、その中でも傑出して知名度の高い作品は『アマデウス』だろう。オーストリアの宮廷楽士サリエリが、若き天才作曲家モーツァルトの才能に激しい憎悪と嫉妬を抱き、その苦悩がやがて大いなる悲劇に繋がっていく。

『アマデウス』の舞台は1979年にロンドンで初演を迎え、翌年にはブロードウェイで上演された。イアン・マッケランがサリエリを、ティム・カリーがモーツァルトを演じたブロードウェイ版は高い評価を受け、1981年にトニー賞の最優秀作品賞を受賞した。

1984年には、シェーファーが脚本を担当し映画化。翌年のアカデミー賞授賞式では、作品賞、脚色賞を含む8部門に輝いた。

劇中に、サリエリがモーツァルトを毒殺したことをほのめかす描写があるが、歴史家ロバート・W・ガットマンはこの点に異議を唱えた。ガットマンは自著の伝記で、モーツァルトの死因をリウマチ熱のような病気であると断定していたからだ。これに対し、シェーファーは「これは戯曲であり、モーツァルトの伝記ではない。しかし、大体のことは史実として裏付けられている。私はサリエリがモーツァルトに対し、なんらかの陰謀を企んだと確信している」と反論。サリエリには生前から、モーツァルト毒殺の他にも盗作疑惑も持ち上がっていたが、何一つ立証されておらず、真実は闇の中だ。

『アマデウス』の舞台は今も英米のみならず、世界中で上演されている。日本では松本幸四郎が1982年の初演からサリエリ役を務めている。

シェーファーは拠点を長らくニューヨークに置いていたが、故郷のイギリスを愛し、ロンドンと行ったり来たりの生活を送っていた。2001年にナイト爵に叙され、近年は療養のためアイルランドコーク郡のホスピスに入院していた。ロンドンで密葬の後、お別れの会が開かれるという。

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