Q,7月1日にリリースされる23枚目のシングル『とびら』はどんな曲に仕上がっていますか?
「東日本の子どもたちに取材をして生まれた曲です。東日本大震災から4年が経ちますが、ここ数年、子どもたちとしっかり対峙して、子どもたちが何を見つめて、何を感じていて、これからどう過ごしていきたいかという、現在と未来への思いと、このタイミングで向き合ってみたいと思い、年末年始に取材をしに行きました。3校の子どもたちと対話をさせてもらい、生まれた旅立ちの歌です。卒業もそうですし、何か一歩踏み出すときに、寄り添うように聴いてもらえたら嬉しいです」
Q,東日本大震災から4年が経ったことをうけて、岩手・宮城・福島県の中学生たちと、今何を思っているか、これから何を残していくかというグループワークをされたそうですが、具体的にどのようなことをされたのでしょうか?
「まず、各中学校の3年生の子どもたち10人くらいと机を向きあわせて座って、3つだけ質問をさせてもらいました。ひとつめは、震災後に、自分自身や周りの家族、友達で変わったと思うこと、成長したと感じること。ふたつめは、震災後に一番嬉しかったこと、支えになったこと。最後は、将来の夢と、もし家庭を持って子供ができたとき、どんなメッセージを伝えたいかを聞きました」
Q,中学生たちと語った中でどんなことを感じましたか?
「14歳、15歳の子どもたちなのに、非常にしっかりした口調でした。「わからないですねぇ~・・・」みたいな、あやふやで、曖昧な子は一人もいませんでした。みんな、はっきり「こうしたい」「ああしたい」と伝えてくれて、夢も確固たるものを全員が持っていました。震災があったから、この夢が生まれたという子も多くて、決して多くは語らないのですが、静かさのなかにある強い思いというものを感じました」
Q,語り合うことで気付かされたことは?
「ある女の子が、子供ができたら『“強がってばかりじゃなくていい。たまには、弱虫になって吐き出していいよ”と伝えたい』と言っているのを聞いて、それは、きっと彼女が自分自身に語りかけてきた言葉なんだろうなあ、と思いました。震災後、大人たちの目に見えないところで、いっぱい我慢してきて、もっと思いっきり吐き出したいことがあったんだろうけど、それを制御して、子どもたちなりに、色んなことを見つめながら生きてきて、いっぱい無理をしてきたんだろうなあ、ということが分かる言葉でした。でも、これからは、そういった自分もすべて受け入れて、包み込んであげて、前に進んでいきたいという思いも感じることができました。4年経っても、まだ消化しきれない悲しみはたくさん残っていると思いますが、それでも、ひとりひとりが受け止めて前に進もうとする姿勢をすごく感じました」
Q,取材で最も印象的だったことは?
「ひとりの男の子が、震災から1、2ヶ月後の避難所で、物資がなくて、電気やお風呂など色んなことを我慢しないといけない状況のなかで、遊べる場所もなく、友達と会えない時間も続いて、ストレスが溜まって精神的にすごく落ち込んでしまったとき、ある警察官がすごく優しく接してくれて『元気出して』と声をかけてもらったらしく、その言葉がすごく温かくて、優しさが響いたと話していました。彼は、その警察官の姿をみて、将来、警察になりたいと思ったそうです。すごく温かいエピソードだなあと思いました」
Q,応援ソングであり、旅立ちの歌でもあると思います。歌詞に込めた思いとは?
「タイトルもそうですが、目の前に降り掛かってくる困難や、大きな苦しみを壁だと思わずに、扉だと思って、いつか自分の力で、自分の手で開いていってほしいという思いを込めました。それぞれが自分のペースで、次に向かう一歩を刻んでほしいと語りかける歌です」
Q,読売新聞の朝刊に譜面が掲載されて、多くの方がこの歌に触れるきっかけになりましたが、いかがでしたか?
「誌面に譜面が掲載されるのは初めてのことだったので、すごく嬉しかったです。色んな学校の子どもたちに歌ってもらえたら嬉しいです。自分の歌のように感じてもらって、合唱してもらいたいですね」
Q, 石巻・南相馬・大槌町の中学校が『とびら』を合唱して、合唱バージョンも制作されました。子どもたちと合唱されて、どのようなものを感じましたか?
「一発録りなので、誰かひとりが間違えたらもう一度録り直さないといけないのですが、みんな、すごく一生懸命練習してくれて、とても良いものが録れました。子どもたちの声が言葉にならないくらい心に染みて、感激しました。自分の作った歌を歌ってくれているということに本当に感動しました」
Q,『とびら』は川嶋あいの新たな卒業ソングの誕生でもあると思います。
「また新しい旅立ちの歌ができたと思っています。『旅立ちの日に』という歌がありますが、それ以来(卒業ソングを)作っていなかったので、また新たに書き下ろせたなあと思います」
Q,川嶋さんは今年、29歳になられて、ちょうど区切りの年に『とびら』が生まれたと思いますが、この一年やりたいことは何ですか?
「『とびら』を書けたことが、私にとってすごく大きな時間になりました。年始はずっと『とびら』の楽曲制作にあてていたので、今度は、夏から秋にむけて、この曲を届けることになりそうです。ライブもたくさん決まっていますし、ひとりでも多くの方に『とびら』を知ってもらえるように活動していきたいです」
Q,今後、どのような活動をされていきますか?
「母の命日(8月20日)にやらせてもらっている毎年恒例のライブを、今年取り壊しになる渋谷公会堂で、最後の渋谷公会堂でのライブがあります。あとは、全国47都道府県ライブもしているので、残りの場所をまわっていきます」
Q,ファンへメッセージを。
「夢や目標を持ったときに、「少し立ち止まりたい」、「休みたい」と思うことがあると思います。そんなときに『とびら』を聴いて、「明日も頑張ろうかな」と思える、少しの希望になるような作品になればと思っています。ぜひ、手にとって聴いてみてください」
リリース情報
シングル『とびら』
[初回盤(CD+DVD)] 1500円(税込み)
[通常盤(CD)]1000円(税込み)
ライブ情報
【Ai Kawashima Concert 2015“ノスタルジック メロディー”】
08月20日(木)渋谷公会堂
OPEN 17:30 / START 18:30 5800円(税込み)