4月5日の『ル テアトル銀座』から、原作・江戸川乱歩、脚本・三島由紀夫、演出・美術・衣装・主演・美輪明宏による伝説の名舞台『黒蜥蜴』が5年ぶりに再演される。女盗賊・黒蜥蜴を追う名探偵・明智小五郎が丁々発止と散らす恋の火花と”究極の対決”。この名舞台誕生のいきさつを美輪さんが語ってくれた。

16歳のとき、バイト先でシャンソンを歌っていたころ、先代・中村勘三郎、江戸川乱歩、三島由紀夫、川端康成などそうそうたるメンバーと知り合い、かわいがられていた美輪さん。’67年に、寺山修司が美輪さんのために書いた戯曲『毛皮のマリ―』上演中の劇場に三島由紀夫が現れたという。

「そのとき『黒蜥蜴』をやってくれないかと、頼まれました。でも『黒蜥蜴』はその数年前に一度、先代の水谷八重子さんが演じていたので、”仁義にもとりますから、それはご勘弁ください”と言って、お断りしたんです。私は彼女とも仲良しでしたから。すると今度は自宅に電話がかかってきた……」

三島はプライドが高く、一度断られると二度と口にしないような人だったという。そんな人が『もう一度考え直してくれないか』と。それでも美輪さんは丁重に断ったのだが、また電話がかってきたという。これはよほどのことだろうと感じた美輪さんは事情を聞いてみた。

「すると、ある人から『三島の芝居は鹿鳴館しか当たらない』と言われたことが悔しくてたまらなかったらしく、『見返してやりたい』と……。『あの寺山の難解なセリフをまったく日常会話のように観客に伝えていた。君なら、僕のレトリックだらけのセリフを操ることができる。あれは誰にもまねができない”超絶技巧のセリフ術”だ』と」

三島がそこまで言うのなら、と美輪さんは引き受けることにしたという。初演は’68年4月、渋谷の東横劇場。美輪さんが『黒蜥蜴』原作者の江戸川乱歩、脚本を書いた三島由紀夫と出会って17年後のことだった。

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