5月15日に伝えられた桂歌丸師匠(80)の退院発表。13日に無事退院したといい、当面は自宅療養を続けるとのこと。師匠は「また各落語会でお会いできますことを私も心待ちにしております」とコメントを寄せている。
そんな師匠の「5月公演全て休演」というショッキングなニュースが報じられたのは、5月8日のことだった。4月16日に入院した当初は「4月中席は休演。30日前後まで入院」とも報じられていたが、再びの休演発表。関係者からは心配の声があがっていた。
実は退院直前、本誌はこうした声を受けて横浜市にある歌丸師匠の自宅へと向かっていた。インターフォンを押すと、冨士子夫人(85)が姿を見せた。記者が「休演報道を受けて心配の声があがっておりまして。師匠のご容態はいかがでしょうか?」と聞いたところ、笑顔でこう答えてくれた。
「いつも自分で酸素ボンベの設定をしていましたので。量はよくわかりませんけど、増やしたようです。やっぱりお客さまに来ていただいているから、やってしまったのだと思います……。でも、5月の休演自体は前から決めていたことなんですよ。だって、また無理をしてご迷惑をおかけするといけませんからね」
この取材の時点では「退院のメドはまだ経っていない」とも報じられていた。だが、冨士子さんは師匠の現在の体調についてこう続ける。
「たしかに入院した当初は動けない状態だったのですが、2週間くらい前からは自分でトイレにも行けるようになりました。まだいろんなところに管がつながってはいますけれど、今は食事も朝昼晩とちゃんと食べているようです。退院はいつになるかは聞いていませんが、もうじき帰って来られると思います。そんなに先ではないですよ」
家族の猛反対を押し切り結婚した冨士子さん。師匠の下積み時代は化粧品のセールスなどで家計をやりくり。家事と2人の子育ても手を抜かず、落語一筋の夫に尽くしてきた。歌丸師匠はテレビや高座で冨士子さんを“鬼嫁”キャラとして話してきたが、実際は良妻の鑑のような献身ぶりを続けてきたのだ。結婚から60年、それは今も変わっていないようだ。
「病院には、毎日通っていますよ。娘婿が車で送り迎えしてくれるんです。向こうではただボーッとしているだけ(笑)。『これ取ってくれ、あれ取ってくれ』と言ってくるので、出してあげたりはしています。やることといえばそれくらいですよ。それでもお昼に行って夕方くらいまでは病室にいるので、家に帰って来ると6時を過ぎちゃいますね」
この日も冨士子さんは車に乗って病院へ。そこで夕方まで“夫婦の時間”を過ごしていた。互いの名前を呼ぶことはなく「おい」「ねえ」と言い合う関係。それでも毎日6時間のお見舞いを続けている。そこには、長年連れ添ってきた夫婦の“阿吽の呼吸”が感じられた。