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「もう認知症がだいぶ進んでいますからね。昨日今日の話をしても覚えられないんですよ。僕が小さかったころの話がいちばん喜ぶんです。僕と弟が小さかったとき、ああだった、こうだったってね」

 

いつくしむような表情で、そう語ったのは、“現場主義”で知られるフジテレビの須田哲夫アナウンサー(68)。定年後の今も嘱託アナウンサー兼解説委員として『新報道2001』の司会を担当している、いわば“フジテレビの顔”だ。

 

そんな須田アナが90歳になる母親の乗る車椅子を押して散歩する姿を見かけたのは、9月上旬のこと。近くのお寺に2人でお参りすると、境内で須田アナは携帯電話を取り出し、老母と仲良くツーショット写真を撮影していた。

 

車椅子を押して戻っていったのは、近くの介護保険施設。須田アナの母親は現在ここに入所しているという。

 

「須田さんは、毎日のようにいらっしゃいますよ。施設任せの方が多いなか、須田さんはご自宅でお母さまの着替えを洗濯して、新しい服を持ってきてくれます。“日本一の孝行息子”と施設内でも評判になっているんです」

 

9月中旬、施設から出てきたところで話を聞いた。

 

「いやいや、世の中にはもっともっとご苦労をされている方がたくさんいるのに、僕が話すなんて恥ずかしいですよ。介護なんて何もできていないのに。今日もちょっとしか寄れなかったですし」

 

あくまで謙遜する須田アナ。

 

――介護保険施設という性格上、お母さまもここに長くは入所し続けられないと聞きました。

 

「認知症も進んでいますし、在宅介護が理想なんて言いますけど、現実は厳しいですよね。自宅で介護をする立場になっても、僕も毎日ずっと家に居られるわけじゃないですしね。 幸い今は認知症以外は健康ですけど、これもどうなるか……。このままこの施設に居てもらいたいけど、先を考えると本当にどうなるのか不安ですよ」

 

逡巡する様子を包み隠さず話してくれた。それでも須田アナは母親を何とか喜ばせようと、この日も懸命だった。

 

「いつも散歩のときは好きなものをちょっと食べさせて。今日は梅干しをひと口。お昼ご飯の前でちょうどいいかな。いつも短い時間ですけど、こうして散歩をするようにしています」

 

実母に尽くす須田の姿は、本誌記者の心を強く打った。世話をしても誰も褒めてくれないのが、介護の現実。須田アナは今日も最前線の“現場”にいた――。

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