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「とうとう、“その日”が来ちゃいます。いまはうれしい気持ちと緊張と不安が、ごちゃまぜになってます。でも私は母親としてやれることをやるしかない、そう腹をくくって、日々を過ごしてます」

 

東京・歌舞伎座の稽古場控え室。中村勘九郎さん(35)の妻・前田愛さん(33)はこう言って、優しい笑みを浮かべた。息子たちがついに初舞台を踏む。2月2日、歌舞伎座で初日を迎える「猿若祭二月大歌舞伎」(2月26日まで)。七緒八くん(5)と哲之くん(3)はそれぞれ、「三代目中村勘太郎」「二代目中村長三郎」を名乗り、父・勘九郎、それに叔父・中村七之助(33)の初舞台と同じ演目『門出二人桃太郎』に出演する。追い込みを迎えた2人の稽古の合間を縫って、愛さんがインタビューに応えてくれた。

 

「子どもたちの稽古を見ていると、もう、胃が痛くなりっぱなしです。セリフの声が小さかったり、お芝居がうまくできなかったりすると、私のほうが不安で不安で。ギュッと、おなかの中をつかまれるような感じになる。そして、そのあと込み上げてくるのは……怒り(苦笑)。『昨日はあんなに上手にできたのに、今日はどうしちゃったの!!』って思わず怒鳴っちゃうことも(笑)。怖いママ?本当、そうですよね。あんまり厳しくしすぎて『ちょっと叱りすぎちゃったかな』と、あとで反省することもあるぐらいです。それでも、まだ兄の七緒八は、冷静に言って聞かせても、理解してくれるんです。でも弟の哲之のほうは……。ふつうに話しても、プ〜ンって、そっぽを向いちゃったりするんですよ。だから、つい私も『こっち向いて、ちゃんと聞きなさーい!』って、またまた大声になっちゃうんです(笑)」

 

1月17日、本番直前の取材会で勘九郎は「(子どもたちより)親のほうが緊張しています」と、苦笑いを浮かべていた。’09年に結婚して以来、勘九郎を間近で支えてきた愛さん。愛さんによる夫の評価は「100点満点で90点」という。マイナス10点は「直してほしいことがあるから」と。

 

「雅行さん(勘九郎の本名)は服を脱ぎっ放しなんですよね。疲れて帰ってくるから仕方ないとは思うのですけど。ソファに横になって、その場で靴下を脱いでポイポイッみたいな。お風呂場まで、廊下に服が点々と脱ぎ捨てられてたり。この癖をなんとかしてもらいたくて、彼専用の洗濯カゴを買って、部屋に置いたりもしたんですけど……、いっさい使ってくれない(笑)。でもね、最近いい方法を見つけちゃったんですよ。子どもたちも、脱いだら脱ぎっ放しでしたし、おもちゃもなかなか片付けられなかったんですよね。それで、私が『脱いだ服はどうするんだっけ?カゴに入れるんでしょう』とか、『片付けられないおもちゃは、児童館に寄付しちゃうよ』と、こんこんと言って聞かせていたんです。すると子どもたちが『え〜、じゃあ、お父ちゃまは?』と、ポロッと言ったんです。それを聞いていた雅行さん、渋々でしょうけど、脱いだ服を片付けてくれるようになったんですよ(笑)」

 

最後に、母としての幸せを感じた瞬間を尋ねた。すると愛さんは「いまですね」とニッコリ笑って、即答した。

 

「男の子が2人、生まれてきたときから、漠然とですけど、『ああ、いつかこの子たち2人で、桃太郎をさせていただけるかな……』って。それが私の夢だったんですよ。その夢がもうすぐかなうんです。私はもちろんうれしいのですけど、これまでお世話になってきた周りの方々も、わがことのように喜んでくださっていて。そういうお話を聞くと、本当に『よかった、うれしい!』って思います。これまで毎日、一生懸命やってきてよかったなって思うんですよね」

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