連続テレビ小説『べっぴんさん』の5週目は、すみれ(芳根京子)は、仲間の明美(谷村美月)、良子(百田夏菜子)、君枝(土村芳)と協力して、靴職人の麻田(市村正親)の店の一角を借り、子供服の店「ベビーショップあさや」をオープンする。お客さん第1号として現れたのは、すみれの父・五十八(生瀬勝久)だった。赤ちゃん用の肌着を手に取り、厳しい表情で品質をチェックする五十八。「きっちり縫製もできとる。生地もええもんや」。商品に対する思いを褒められ、嬉しそうに笑うすみれ。
開店を聞きつけてやってきた時子(畦田ひとみ)ら近所の主婦たちも、生地がやわらかく手触りもいい上に商品に対する細やかな気遣いを知り、「お世辞抜きでええもんばっかりや」と絶賛する。その光景を見ながら、五十八は満足そうに微笑む。ところが、すみれたちは商品の値段を付けていなかった。お嬢様育ちで頼りないすみれたちに商売の基本を教える五十八。
「この商品にどういう思いを乗せて売りたいんや?」と訊ねると、すみれは、「新しくて便利な、明美さんの育児の方法をこういう商品に乗せて広めたい思てる。子供たちが快適に過ごせるように。健やかに成長できるように」と答える。「ええやないか。そういう思いを乗せた値段を付けなさい。その上で買うか買わへんかはお客さんに預けるんや」と五十八。すみれは、時子たちに商品をプレゼントすることに決める。そこへ姉のゆり(蓮佛美沙子)が青ざめた表情でやってくる。夫の潔(高良健吾)が警察に逮捕されたというのだ。
すみれたちのベビーショップの店に、派手な格好をした女性客が米兵を連れて入ってくる。良子はその客に拒否反応を示すが、その態度を見た君枝と明美に注意され、むくれてしまう。「これだからお嬢さんは嫌」と明美。
一方、ゆりは、五十八と共に警察に捕まった潔を迎えにいく。取り調べが終わるのを待っている栄輔(松下優也)は、あこがれの五十八と会えて感激する。釈放された潔と共に大阪の闇市に帰るが、潔のバラックが荒らされていた。場銭を払わないからだと嘲り笑う闇市の元締めの子分たちに「なんぼや?」と潔。子分たちに言われるまま、300円を手渡す。潔が無事に釈放されたことを栄輔から聞き、安心しているすみれ
ある日、すみれたちにテーブルクロスを作るという新しい依頼が舞い込む。君枝がかつて住んでいた本宅に住むランディ夫妻がホームパーティーを開くためだという。依頼人の要望を聞くため、明美に通訳を頼もうと言うが、開店日に接客態度を注意された良子は、「私は、あの人好かんのよ」とこぼす。4人の関係がぎくしゃくし始めたことを心配するすみれ。
さらに、そこへ戦地から良子の夫の勝二(田中要次)が神戸に帰ってきた。友の幸せを喜ぶすみれたちだったが、戦地から戻らない夫を案じる。「必ず帰ってくるよ」と君枝を励ますすみれ。良子は自宅のバラックで帰ってきた夫を精いっぱいもてなすのだった。そんな折、明美は勤務先の病院を突然クビになり、ショックを隠しきれない。「うちはそういう星のもとに生まれたんや」と落胆する明美を励ます麻田。
テーブルクロスを作るという新しい依頼を受けたすみれたちは、デザインを相談するため、良子を店番に残してでかけていく。パッチワークで制作を進めることで了解を得て帰ってきたすみれたちに、良子は突然「お店を辞める」と言い出すが、「主人を支えることが私のいちばんの仕事だと思う」と言う良子の言葉を受け入れる。そこへ、勝二がアメリカ製の石鹸を土産に持って店に現れる。
「これからもよろしくお願いします」と頭を下げる勝二に驚くすみれたち。良子は嘘を付いてまで店をやめたかったのかと落ち込んでいると、そこに一人の女性客がやってきた。開店日に米兵と訪れ、肌着商品を大量に購入していったその人だ。そして、すみれたちは店番をしていた良子の身に起きた事件のあらましを聞くのだった。
チョコレートや串焼きを食べながら商品の物色する客たちに「商品が汚れる」と注意した良子だったが、何様のつもりだと詰め寄られ、「買わなくていいです!」と暴言を吐き、さらに責められてしまったという。同じころ、良子の家では、嘘をついて店をやめたことを知る勝二は、「嘘は大切な人を失くす」と良子を諭すのだった。
一方、大阪・梅田の闇市では、ゆりが土地の持ち主でもない元締めの根本(団時朗)になぜ場所代を払わなきゃいけないのか、納得いかないと五十八と潔に責めよる。「相手に正しいことを主張すべきです」とゆり。すると、五十八は、「自分が表に出て話して来い。文句ばっかり言うて、何もせえへんのは卑怯やないか」と言い、根本のもとに向かわせる。
五十八は亡き妻・はな(菅野美穂)の言葉を思い出していた。「ゆりは、強う見えても、ここいうところで自分を貫けへんところがあるの。最後の最後、そこが心配」と語る妻に「任せとけ!」と約束したのだ。
五十八と潔たちと根本のもとに向かったゆりは、根本と対峙する。「私、不思議で堪らないですけど、どうして闇市の場所代をあなたが取るんですか? 地主でも大家さんでもありませんよね?」とゆり。そう決死の覚悟で自分の意見を訴えるが、鼻であしらわれる。
気を落とすゆりをいたわりつつも、厳しく言い放つ五十八。「世の中には理屈で通らんところがある。商売をやっとったらそんなことの連続や。そういうこととどないして対峙していくか、どないして解決するか、打開策が見つかるかどうかでその先が違うてくる」と。一方の潔は、傷ついたゆりに「やっぱり、おもろい女やな。わしが言いたいことを全部言うてくれた」と励ますのだった。
そのころすみれたちは、良子が突然辞めてしまったことにショックを受けつつも、依頼を受けたテーブルクロスの制作を進めていく。ある日、君枝の夫・昭一(平岡祐太)が戦地から帰ってくる。
すみれは、パッチワーク用の生地の端切れを手に入れるため、闇市の潔の店を訪ねる。五十八が潔とゆりに今後の商売について話があるという。粗悪品を売っても、今はこの商売方法しかないという潔に「わしやったら、保証をつける。これはええもんやとほんまに自分で言えるもんしか売らん。そして信用を得る。焦るな! 急がば回れ、それが商売の、いや、人生の基本や!」と言い聞かせる五十八。
「負けっぱなしはわしの性分に合わんのや」。それから数日がたち、五十八が闇市の元締め・根本の元に出向く。人が集まるところは誰かが仕切らないと秩序が守れないと言う根本に、自分たちが潤うために弱い者たちから金を吸い上げても日本の未来のためにならないと主張する。
そのために、「まずは手と手を取り合うことがいちばん大事なこと」と人々に訴える五十八。初めは相手にされなかったが、その言葉は市場の人々の胸を打ち、次第に人だかりができる。「誰もが安心して買い物に来られる健全な発展を目指さなければ未来はない」。そんな街を作るリーダーはあなただ、と根本を説得するのだった。そんな五十八の姿を見て、「昔のお父様に戻ったみたいやったわ」と喜ぶすみれ。
一方、すみれたちが依頼を受けたテーブルクロスを納品する締め切りが迫っていた。良子が店を辞めて人出が足りない中、さらに君枝までもが昭一に店のことを話さず、このまま店を辞めたいと告げにくる。2人の友が新しい生活へと踏み出す中、すみれは、自分には自分の進むべき道があると胸に刻むのだった……。
第6週の『べっぴんさん』は、すみれと明美は、徹夜でテーブルクロスを完成させる。依頼主のランディ夫妻はその出来栄えに大喜びし、君枝にも感謝を伝えるが、その光景を見た君枝の夫・昭一に働いていたことを知られてしまう……。