ついに、息子は小学校を卒業することが出来ました。
感慨一入です。
父として肩の荷が下がりました。
離婚直後、子供の精神状態は最悪でした。
私も同じでしたが、それを支え合い乗り越えたのですから、父子は今、何より晴れ晴れしい気持ちです。
周囲の方々の協力には本当に感謝をいたします。
特に担任のイザベルをはじめクラスメートの親御さんたちの温かいご指導ご鞭撻、惜しみない協力の賜物です。
息子のために手作り枕をくださったママ友さんもいらっしゃいます。
私が日本へ仕事で戻らないとならないときなど息子を預かってくれた方々もいます。
辻さん、よくがんばったね、と私たちをイタリアの避暑地にご招待してくれたご夫妻もいました。
みんな息子のクラスメートのご両親です。
日本の方々にも支えられました。
離婚直後、家から出られない状態が続いていたときには、私に代わって、引っ越しや誕生会の手伝いをしてくださった方も。
私ども父子家庭はこのような方々に支えられ、ついに今日を迎えることが出来たのです。
これは人生における真実の勝利といっていいでしょう。
最後の登校の日、私たち父子は校門の前で抱き合い、おめでとう、がんばったね、と言い合いました。
息子が私に、パパ、がんばったね、と言いました。
私は息子に、がんばったのはお前だよ。
おめでとう、お前は私の誇りだよ、と伝えました。
担任の先生に「離婚のあと、一度も泣かず、成績も伸び、進学も真っ先に決めて、挨拶も態度も実に素晴らしい生徒でした」と太鼓判を押されての卒業となったのです。
肩の荷が1つ下りました。
父子家庭ですが、馬鹿にされたくはありません。
息子に恥ずかしい思いをさせたくなかった。
だから、私は自分のことよりもまだ幼い息子との生活を第一に選んだのです。
恋愛している暇なんか親にはありません。
仕事は一応、余った時間でやることにして、家のことを優先しました。
不在の母親の穴を自分が埋めないとならないわけですから。
かまびすしい世界ですが、涙が出るほど人の優しさが身に染みた一年でした。
今年に入って、父子は復活しました。
私たちは2人でたくさん旅行をし、今までにないくらい語り合いました。
会話は大事です。
母親が不在という理由もきちんと説明してやりました。
納得は出来ないみたいでしたが、仕方ないね、と理解はしていました。
未来に向かって2人で生きていこう。
パパはお前をずっと支え続ける。
どんな大変なことが起きても命がけでお前を守るし、何より、片時も傍にいて離れない。
だから、安心するんだ、と言い続けてきました。
子供に安心感は不可欠です。
それを与えるのが親の一番の仕事。
学校の送り迎えは義務で、雨の日も雪の日も休まず続けました。
しかし、9月からは送り迎えせずに済む、彼は1人で中学校へ通うことになるんです。
やりました! みなさん、息子は小学校を卒業したんです!!
さて、手早く作れる本格的な辻家の美味しい簡単チーズトーストをご紹介しましょう。
材料2人分:食パン4枚。バター、スライスチーズ、パセリ。
レシピ:パンに薄切りバターをのせ、熱したフライパンにバターの面を下にして4枚並べます。手で細かくパンを左右に動かしながら、焼き面がきつね色になるまで焼きます。焼けたらひっくり返し、両面をきつね色にします。まな板に取り出し、食パン2枚の上にスライスチーズを置いてそれぞれもう1枚で挟みます。1つのパンを3等分にし、計6個の細長のサンドを作ります。
上手に立てて並べると、ほら、写真のような可愛いチーズトーストプレートが出来上がりますよ。簡単ですから忙しい朝のメニューに最適。上からパセリ、足りなければちょっと岩塩をふってください。朝の家族の、「ママ、美味しい!」が嬉しい一品になること請け合いです。
ボナペティ!
エッセイで紹介されたレシピは、
辻仁成 子連れロッカー「希望回復大作戦」ムスコ飯<レシピ>で公開中!
辻仁成/つじ ひとなり
作家。東京都生まれ。’89年「ピアニシモ」ですばる文学賞、’97年「海峡の光」で芥川賞、’99年「白仏」で、仏フェミナ賞・外国小説賞を受賞。映画監督、演出家としても活躍。現在はシングルファザー、パリで息子と2人暮らし。
近著に『日付変更線』(集英社刊)がある。