昨今「工場夜景」として特集されることも多い工場の夜景。
ライトアップされるわけではなく、あくまで実用性のため照らされるその地は
一体どんな魅力があるのか。工場地帯へ向かった。
人間は、広い世界のほんの一部で生きている。
全てを知ることはできない。
世界のどこかには、自分の知らない何かを熱狂的に愛してる人がいる。研究する人がいる。
そんな人が集まると、小さなブームになる。
誰かの世界を、少しだけ覗いてみちゃおう。
それが「うさこの覗いた世界」なのだ……!
観光のためにライトアップされた夜景よりも、輝く夜景がある。
―――「工場夜景」だ。
石油化学コンビナート、製鉄工場、セメント工場……。
わたしたちの生活を見えないところで支える化学工場は、夜になっても動き続ける。
昼間は無骨なその姿も、暗い作業場を照らすためのライトによって何とも美しく映えるのだ。
「廃墟」や「ダム」、そして「工場」。無機質な機能美にときめく人が増え、写真集なども多く発行されている。
見た目ではなく、テクノロジーを追求するための究極の形。
媚びないからこそ、美しいものがある。
わたしも「橋」や「高速道路」など複雑で絡み合う構造にうっかり萌えてしまうタイプだ。
しかしそれを抜きにしても、美しいのが「工場夜景」。
以前夜の高速道路を走るバスの中で「何これ?宝石箱でもひっくり返したの?」と思うような光に溢れた景色を発見した。
位置を確認すると、そこは大きな工場地帯。
それだけ一際明るくて、幻想的な場所なのだ。
日本にはいくつかの工場地帯があるが、
中でも室蘭市(北海道)・川崎市(神奈川県)・四日市市(三重県)・周南市(山口県)・北九州市(福岡県)は「日本五大工場夜景エリア」と呼ばれ人気を集めている。
わたしは上記に比べたらささやかながら関西圏を支える尼崎市(兵庫県)の工場地帯へ足を運んだ。
多くの化学工場は海のそばに展開する。
材料を水路から運べる広い土地となると海沿いが好ましいようだ。
わたしの持ち物はカメラ、望遠レンズ、そして三脚。
柵は越さない・人の迷惑にならない・不審者に間違われないというお約束を守り、
「わぁ☆きれいだな~!」と浮かれながら撮影をした。
ライトに照らされるパイプ。赤く光るタンク。煙突から湧き上がる煙。
恐らくひとつひとつが、重要な化学物質を運んでいるのだろうが
なぜこんなにも複雑に絡み合い、なぜこんなにも美しいんだろう……?
カメラの設定で光の色味やシャッターの速度を変えればまた全く違う世界にもなった。
いいね……すごくいいね……!
まるで変態カメラマンのように、夢中でシャッターを切る。
この使用感のある錆びがまたグッと味わいを増すよね。
まるで年代物のワインのような良さ。
水に反射した姿もこれまた幻想的な世界を作り出す!
もう……巨大なアートに見えてくるね……!
多くの工場がそばには近寄れないため、
慣れてない人が撮影スポットを探すのは思ったよりも難しい。
工場同士も離れているため、今回は車で移動しながらの探検となった。
しかし橋や向かい岸の公園など「ここなら見える!」という場所を探し出して撮影することは宝探しのような楽しさがある。
人気の夜景スポットはもちろん美しいが、
人知れずこっそり楽しむ夜の工場にはオリジナルの魅力があった。