【高知】龍馬生誕180年 南国土佐の山をめぐり、「最後の清流」で遊ぶ
乱世の幕末を駆け巡り、近代日本の礎を築いた坂本龍馬(1835~1867)。今年は生誕180年ということで、高知では数多くのイベントが開催され、全国各地から龍馬ファンが訪れている。9月中旬、ANA561便で高知に向かった。台風が去った直後で大気が澄みわたり、機内からは無冠雪の富士山の堂々たる姿を眺めることができた。
今回は高知市内の里山「南嶺」、雄大な石鎚山、瀬戸内海を望む「瓶ヶ森」、そして四国カルストの東端に位置する「天狗の森」を歩いた。海のイメージが強い高知だが、実は日本一の森林県(森林率84%)だ。その豊かな森が「奇跡の清流」「最後の清流」を生み出す。旅の最後は四万十川のカヌー下り。土佐の大自然を堪能した。
【南嶺(なんれい)】358.7メートル(烏帽子山)
チンチン電車に乗って浦戸湾、黒潮の太平洋を一望する里山めぐりに
高知龍馬空港からレンタカーで30分、高知市内のホテルに着いた。チェックイン後、路面電車に乗って出発。小さなザックを背負い、チンチン電車で市内の風景をのんびり眺めながら山歩きに向かうローカル感がいい。長崎でもそうだった。大橋通電停で降り、板垣退助生誕地近くの商店街を抜けると鏡川。澄んだ川に大きな鯉が悠然と泳いでいる。
「南嶺」は高知市の南部に連なる低山の総称。市民のハイキングコースとして親しまれている。電停から歩くこと20分で筆山登山口。土佐藩山内家ゆかりの墓所がある石段の道を登っていく。筆山からは高知城を眺めることができる。ハイキングコースは墓地の中を進む。途中、「東洋のルソー」と呼ばれる思想家・中江兆民家の墓を見つけた。夏草が生い茂り、ツクツクボウシが鳴いている。
15分ほどで皿が峰。前方に目指す鷲尾山、烏帽子山の姿が見える。土曜日の午後、先生に引率された中学生の集団が後ろから迫ってきたので道を譲る。「こんにちはー」。元気のいい声であいさつして通り過ぎていく。道中、トレイルランの高校生の姿も多い。ハーハー息を切らしながら、それでも挨拶は忘れない。土佐の男子は実に礼儀正しい。エライぜよ。林間に手作りの巣箱が掛けてあり、作者の名前、ニックネームが記されている。森を愛する気持ちが伝わってくる。コース中にある土佐塾中・高校の寮を過ぎると吉野分岐。急斜面がつづく。このあたりで急にバテテきた。気軽な里山ハイクだというのに、どうしたのだろう。そうか、朝から何も食べていなかった。典型的な「シャリバテ」である。一休みして水分補給。斜面を登りきると再び分岐があらわれ、ここを右に折れてしばらく進むと鷲尾山の山頂に着いた。標高306メートル。ちょっとした広場になっている山頂からは、浦戸湾や黒潮の太平洋を一望できる。爽快な眺めだ。大休憩。
下山途中、祭りの屋台で腹ごしらえ。元祖・山ガールの厚情に感謝!
鷲尾山から烏帽子山に向かう道は、急な下りから始まる。足を取られないように進み、再び登り返すと神社が見えてきた。石土神社だ。ここには烏帽子山一等三角点もある。旅の無事を祈願して舗道を下る。20分ほど下ると、和太鼓の演奏が聞こえてきた。近づいてみると社会福祉施設のお祭りだった。屋台がある。腹ペコの身にはありがたい。地鶏・土佐ジローの焼き鳥におにぎりがうまい。ギンギンに冷えた缶ビールで喉を潤す。生き返った!
市内に戻ろうと車道を下りて行くが、ここで大チョンボ。途中の県道を右に行かなければならないのに、左へ。行けば行くほどひなびていく。バス停があったが、最後のバスの時間を過ぎていた。仕方なく歩く。やがて田んぼが見えてきた。作業を終えて片づけをしているおばあちゃんに道を尋ねると、やはり反対だった。春野方面に下りてきてしまったのだ。さて、どうしたものか。思案していると、おばあちゃんが「送ってあげよか」。申し訳ないのでお断りしたものの、「もうバスもないから」とマイカーに乗せてくれ、県庁前まで送っていただいた。聞けば77歳。昔から山歩きが好きで「(四国を代表する)石鎚山や剣山、(本州の)白山や尾瀬の燧ケ岳にも登った」という。元祖・山ガールだったのだ。丁重にお礼を言い、帰っていくおばあちゃんを見送った。厚い人情に深謝です!
【日本一のカツオ】 ひろめ市場で人気の「カツオの塩たたき」を味わう
高知といえばカツオ。1世帯当たりの年間消費購入量はダントツで全国1位だ。お目当ては「県民総選挙」(投票数2万2645票)で総合第1位に選ばれた「明神丸ひろめ店」の塩たたき。飲食店、鮮魚店など約60店がひしめく人気の屋台村「ひろめ市場」に向かう。地元の人、観光客、それぞれがお気に入りの店でテイクアウトした料理を共同のテーブルでわいわいがやがやと楽しむスタイルだ。
土曜の夜とあって大盛況。一角で藁を焼いた大きな炎が上がる。藁焼きの実演だ。さっそく「明神丸」で塩たたきを購入。アオサの天ぷらもチョイス。ようやく見つけたテーブルで、分厚い身を塩ダレにつけて食す。皮目が香ばしく、鮮度のいいカツオの味わいが口の中に広がる。アオサの天ぷらはカラッと揚がり、磯の味だ。冷えた酔鯨がうまい。高知の夜は、まだ始まったばかりだ。さあ、次はどこへ繰り出そうか。
【龍馬生誕180年】
今年は坂本龍馬の生誕180年。高知駅南口には 大河ドラマ「龍馬伝」の撮影で使われた龍馬の生家セットを再現した「龍馬伝」幕末志士社中や土佐勤皇隊の三志士、坂本龍馬、武市半平太、中岡慎太郎の像がある。駅を降りたとたん、龍馬の世界に突入だ。
名勝・桂浜にある有名な坂本龍馬銅像。ここでは、「龍馬に大接近」ということで11月15日まで、銅像の隣に特設展望台が設置されている(入場料大人100円)。龍馬と同じ高さから、黒潮の太平洋を眺めてみたい。来年2月14日には、高知城近くの県庁前をスタートし、仁淀川河口付近で折り返す「2016 高知龍馬マラソン」が開催される。
ANA 山ガールの高知自慢
とさでん交通株式会社 航空部空港第一課
濵田 明日香さん
久保田 美智さん
四国カルスト「天狗高原」一帯は癒しの森が広がります
四国カルストは標高約1400㍍、東西約25㌔に広がる台地で日本三大カルストの一つです。四万十川の源流点からさらに奥に入った愛媛県境の津野町にあり、山歩き、キャンプ、ツーリングといろんな楽しみ方ができます。ベストシーズンは春から秋にかけて。私たちにとっては避暑地でもあります。夜は星が本当にきれいですね。天狗高原一帯は豊かな癒しの森が広がり、「天空の爽回廊」「セラピーロード」と名付けられた遊歩道も整備されています。ヒノキのチップが敷き詰められた道は、足にやさしいのでファミリーでも大丈夫です。森林セラピーでリラックスしていただきたいですね。高原で味わうソフトクリームも最高ですよ!
仁淀ブルーの原点、中津渓谷の滝と紅葉は絶景です
仁淀川の支流、中津川にある中津渓谷(仁淀川町)は、迫力ある滝や神秘的な淵が展開する、まさに自然のオブジェです。落差20㍍の「雨竜の滝」、白い水しぶきが緑に映える「竜宮淵」などの大自然の芸術品を遊歩道に沿って歩きながら眺めることができます。マイナスイオンを全身に浴び、水と紅葉の絶景を楽しんでください。近くには「ゆの森温泉」がありますので、散策の後は温泉でごゆっくりお寛ぎください。