「娘がトルコへ旅行するとは聞いていました。大学の友達と、観光に……。まだ何も考えられない。信じられないです……」と栗原舞さん(享年22)の父、満宏さん(50)は、娘の悲報にこう声を振り絞った。
新潟大学教育学部4年生の栗原さんは、同級生の女子学生と2人でトルコを旅行中の9日、カッパドキアの渓谷で現地の男に襲われた。同級生は一命を取り留めたが、栗原さんは予期せぬ凶刃に命を落とした。
卒業後は金融機関への就職が決まっていた栗原さん。彼女は就職活動を始めるまで、大学近くのラーメン店でアルバイトをしていた。ラーメン店の店主は、栗原さんの人となりについて次のように語る。
「栗原さんは週に4日、18時から22時まで4時間、働いていました。バイトの中でも“お姉さん”的な立場で、みんなから信頼されていましたよ。若いコに指導したり、注意したり。頼りになるので接客はほとんど彼女にまかせっきりにしていました」
栗原さんは、東日本大震災被災地である宮城県名取市の出身だった。
「彼女がアルバイトを始めたのはちょうど震災の後ぐらいのことです。経済的に少しでも自立しようという気持ちもあったのかもしれません。就活が始まる前に辞めましたが、バイト代は月に5万円ぐらいだったと思います。今回の旅行資金も、そうやってがんばってためたお金の中から出したのでしょうね」(前出・ラーメン店の店主)
また、栗原さんを知る教育学部の女子学生はこう話している。
「新潟大はおっとりしていてのんびりした雰囲気の大学なんです。私たちの生活の楽しみといえば、バイトの貯金で買い物したり、たまに旅行するぐらいです。栗原さんの今回のトルコ旅行も前から温めていた計画で、それこそ大学時代いちばんの思い出づくりだったんじゃないかと思います」
週4日のアルバイトで叶えた念願の卒業旅行のさなかに、将来の夢は無残にも引き裂かれてしまったのだ。栗原さんの未来が絶たれたことが無念でならない。