「自民党が最優先に打ち出している政策は景気回復のためのデフレ対策です。どんどんお金を刷ってインフレ傾向にしようというもので、『安倍バブルの到来か』などと株式市場は盛り上がっています。ただし、これが私たちの生活にどう影響するか、楽観視はできません」
そう解説するのは経済ジャーナリストの荻原博子さん。これまで、衣料品や食料品、外食の値段が安くなるなど、ある意味デフレは庶民生活の味方になった部分があった。しかし、自民党のデフレ対策で、そうした激安商品の値上げの可能性も出てきていると荻原さんは語る。
「まずいえるのは、今後はインフレといっても値上がりするものと、値上げできないものに分かれるということです。まず電気やガスなどの公共料金は、問答無用で値上げされてしまうでしょう。食料品も軒並み、価格が上昇する可能性が高いでしょう。世界的に穀物価格が上昇しているので、輸入頼みの日本はこの影響をモロに受けます。そして、ここへきて原油価格も上昇に転じています。これらが’13年の家計を直撃しそうです。
荻原さんによると、仮に月収30万円の家計で食費が3万円だったのに、今までと同じものを買っても3万5千円が必要になるということもありえるという。
また、ユニクロのような安さと品質で人気を得ている企業は、値上げをすると即、売れなくなってしまう可能性もある。そのことから、値上げに踏み切ることができず、結局、人件費などのコストカットを徹底することで価格を抑えなければならなくなることも。その結果、従業員の給料は下がり、パートなどの雇用は縮小せざるをえなくなる可能性も出てくると荻原さんは話し、次のように続ける。
「安さが売りの業界といっても本当は、単価を上げなければ企業の存続も危うくなるところ。生き残りが激しくなりそうです。インフレ政策がうまくいって景気が上向いたとします。本来なら景気が上向くと全体的にお金も回り、給料が上がり、消費も増え、経済全体が潤ってくるはずですが、そうはいきそうもありません。業界によっては働く人にしわ寄せがくるので、そういう人たちの家計にまでお金が回ってくるのは難しいでしょう」