猪瀬直樹氏(67)が都知事辞任会見を開いた前日の12月18日夜、首相官邸では華やかな宴が開かれていた。出席者は安倍晋三首相(59)のほかに森喜朗元首相(76)、下村博文文化相(59)らだったという。“首を洗って待つ男”を尻目に、宴は2時間余り続いた。
「顔ぶれからわかるように、東京五輪が決まった9月7日、首相とともに国際オリンピック委員会(IOC)総会が開かれたブエノスアイレスにいた面々。参加したメンバーによれば、招致成功の祝勝会であり慰労会だった。もちろん、猪瀬氏も本来なら参加していたはず。でも、話題になったのは、ポスト猪瀬のことばかりだったようです」(官邸詰め記者)
確かにこの18日、知事辞任情報はまたたくまに永田町に広まった。昼過ぎ、猪瀬氏が後継者指名を受けた石原慎太郎氏と、その片腕である平沼赳夫氏(74)が官邸を訪ね、首相と1時間以上にわたって会談したからだ。このタイミングで石原氏が安倍氏と面談したとなれば、猪瀬氏の進退問題であることは容易に想像がついた。
そして宴がお開きになり、参加者が公邸から引き上げる際に、ある象徴的なシーンが訪れた。森元首相に向かって「万歳」がなされたというのだ。その万歳の意味を、記者に問われた萩生田光一・総裁特別補佐は「ただの酔っ払い」とだけ答えてかわした。だが、五輪についての猪瀬氏と、安倍&森氏の対立の構図を考えれば、そんな単純ではない。
「両者は五輪組織委員会の会長人事をめぐっていがみ合っていた。安部首相は招致の最大の功労者は森氏と評価して組織委員会会長に推していた。猪瀬さんは“人選は首相がやるわけではなく、僕のところでやる”と公言していた。また日ごろから森氏は五輪招致で猪瀬氏をからかう発言をしていた。例えば猪瀬さんが招致を自分の力でやった、と思い込んでいるのが『可愛らしい』と皮肉ったこともあった」(同・記者)
その猪瀬氏が失脚したことで、森氏会長の公算が強くなったのは間違いない。功労者・森氏への万歳か、猪瀬氏失脚そのものへの万歳か……。いずれにせよ、安倍政権が“可愛らしい男”を切り捨てた瞬間だった。
(週刊『FLASH』1月7・14日号)