7月の参院選の結果を受け、現実味を帯びてきたかのようにいわれる“改憲”。でもちょっと待って!変える?このままでいい?の議論になっている「憲法」について、ちゃんと理解できていますか?
「大学の講義で『日本国憲法を守る義務があるのは誰ですか?』と聞くと、多くの学生が『私たち国民です』と答えるのですが、それ、違います。安倍首相はじめ、国会議員など、いわゆる“権力者”こそが『尊重し擁護する義務を負う』と第99条に、ハッキリ書かれているのです」
初めて知ってビックリな人もいるかもしれないが、「まず、そこを理解してほしい」と話すのは、フェイスブック上のグループ「全日本おばちゃん党」代表代行の谷口真由美さん。大阪国際大学准教授であり、『憲法って、どこにあるの? みんなの疑問から学ぶ日本国憲法』(集英社)などの著書がある谷口さんは、さらに続けて−−。
「『99条+補則4条=全103条』しかない日本国憲法。しかも書かれている内容は、現代人にとって、ごく『当たり前』と思えるものがほとんど。難しく考える前に、『知憲』=『憲法を知ること』をぜひ、夏の課題にしてください!」
では、憲法には何が書かれているか?日本国憲法には『国民主権』『基本的人権』『平和主義』という『三大原理』が書かれている。そのなかの『平和主義』について、谷口さんが解説してくれた。
「これは前文と第9条に書かれているので、セットで考えるといいですね。まず前文の《日本国民は……》で始まる文章、学校で暗唱させられた記憶、ありません!?『平家物語』の《祇園精舎の鐘の声……》という冒頭文と同様、スラスラ出てくる人も多いはず。でも、大事なのは意味。《日本国民》を『私』に置き換えて読んでみてください。『私は、政府の行為によって再び戦争の惨禍が起こることのないようにすることを決意する』となります。つづいて『私は、恒久の平和を念願し……』と読むことができます。この前文で書かれていることはつまり、『私』たち《国民》の決意であり、宣言であり、誓いなんですね」
前文とは、「はじめに」みたいなもので、大切なメッセージが書かれている「原点」だと、谷口さんは言う。
「暗唱するだけでなく、その意味を『自分のこと』として考えてみると『“戦争はいけない”と宣言する』のが『私たち』なのだとわかると思います。そして前文を受ける形で、第9条がもうけられました。1項は、わかりやすくいうと、次のようになります。『私たち国民は、国や政府が権限をふりかざして戦争を始めたり、武力を使うことを、永久に捨てました』。続けて2項は、『戦争放棄という目的を達するために、軍隊や戦力を持ちません。国が戦争する権利も認めません』となります。ここで大事なのは、『永久に放棄する』ことに加え『戦力を持たない』『戦争する権利も認めない』と誓ったこと。これが世界で類を見ない“平和憲法”といわれる理由です」