「私はずっと希望の試合の撮影係でした。ビデオに私の声が入ってしまうから、応援を我慢していたんです。だから、リオでは思い切り声援を送りたいのです」
そう話すのは、リオ五輪女子バドミントンでメダルが期待されている奥原希望選手(21・日本ユニシス)の母・秀子さん(57)。娘の応援のためにブラジルに行くことを心待ちにしている。
父親の圭永さん(58)の影響でバドミントンを始めた奥原選手。父との二人三脚で娘が頭角を現すいっぽう、運動が苦手な秀子さんはサポート役に徹した。
「身長が伸びなかったから、乳製品を飲ませたり、夜10時までに寝かせたりしましたが、なかなか伸びなかったですね。ただ、小さいときから、なんでも自分でやらせるようにしました。たとえば、小学校1年生でスキー場のリフトに乗りたいと言われたときも、普通なら親が一緒に乗りますが、あえてどうしたら乗れるか大人に聞くようにさせていました」
また、こんなことも。
「お絵かきするときに『くれよん』と一語だけ言うので、『クレヨンをどうしたいの?』としつこく聞いて『くれよんちょうだい』と言わせるように。しかも黙って受け取るようなら『ありがとう』というまで渡しませんでした。自分でなんでもやる力とコミュニケーション能力を高めてほしかったんです」
世界の大舞台でも物おじしない奥原選手の強じんな精神力は秀子さんの教育が生きている。しかし、世界ランカーが集まる「全英オープン」で優勝するなど、世界中から注目されている娘に少し複雑な思いがあると秀子さんは語る。
「自分の子であって、自分の子じゃないような……。なんだか公人になってしまったようでうれしいやら寂しいやらという気持ちです。海外遠征から帰ってきても、行事やいろいろな人に会うから大忙し。家で大好きなお赤飯とかぼちゃの煮っ転がしをおいしそうに食べている姿を見て、ようやく帰ってきたと思えるんです」
リオには奥原選手のために赤飯を持って行こう、そう秀子さんは考えている。