「林市長の“待機児童ゼロ宣言”は、まやかしです。実際には、今(4月現在)でも1千746人の待機児童が市内に存在して、ママたちを悩ませています」
と、指摘するのは、元保育士で3児のママの荒木由美子横浜市議だ。
「そもそも、ゼロという数字は、算出法を変えて“過少申告”した結果と言えます。実は、事業所内保育施設(託児施設)や一時保育施設、市が助成する認可外保育施設・横浜保育室へ入所中の児童などは、待機児童に含まれていません。さらに、親が主に自宅で求職活動中の児童や、親が育児休暇中の児童も計算外なのです」
「認可保育所へわが子を入れたい」という母の願いが100%かなっているわけではないのだ。横浜市が認可保育所の定員を増やす努力をしているのは事実だが、荒木市議は次のような“将来のリスク”を挙げる。
「質より量を優先したとしか思えないほど、保育サービスの低下が懸念されています。その大きな原因は、保育環境の悪化と、保育士の人材不足の2点にあるようです。どの保育所も、厚生労働省の規制緩和の適用を受けています。ただし、法制上は問題ないとはいえ、日当たりも風通しも悪い保育室は、保育には不向きでしょう。園庭がない保育所では、近所の公園に出かける頻度が増えるため、交通事故に遭うリスクも増えてしまいます」
一部の保育所では、《感染症発生時の対応について、症状のある子どもを医務室で保育するなどの適切な対応を取っておらず、感染症がまん延していた》(『平成23年度施設指導監査結果情報』より)というように、園児が危険にさらされる事態が起きている。
「当時の細かい状況はわかりませんが、対処できないほど、現場は疲弊しているのでしょう。民間企業は利益を追求するあまり、人件費を抑えようと、非正規雇用の保育士や、無資格のスタッフを増やして、悪循環に陥ることも心配でなりません」(荒木市議)
そう語る荒木市議は、子どもたちのために、保育士の待遇改善がまず必要だと訴える。
横浜市は、荒木市議が指摘する問題点について、どう考えているのだろうか。
――待機児童ゼロの数え方は?
「厚労省の通知による定義を基本にして計算しています。待機児童ゼロはあくまで統計上の数字だということも理解しています。我々は、保育コンシェルジュという制度で、まずは実態を把握することが重要だと考え、育休や求職活動の状況も把握しています」(横浜市・こども青少年局保育対策課)
――民間の保育所のほうが離職率が高いという指摘があるが……。
「離職率が高いというデータは持ち合わせていません。民間の保育所の平均勤続年数は6年ですが、新設の保育所も含まれているので、それなりに経験のある方がいても全体的に若くなってしまいます」(こども青少年局保育対策課)
荒木市議は、横浜市の育児環境についてこう語る。
「林市長の政策の優れた点もありますが、横浜市は、ほかの自治体に比べると子育てには向いていないと思います。認可保育所でも、保育料とは別に昼食の主食代が徴収されます。児童館、公立の幼稚園、学童保育もありません。小児医療に関しては、通院の場合、無料なのは小学校1年までで、さらに所得制限があります。公立中学校には給食もありません」