「紫外線の影響が騒がれているので、小学3年生の娘の水泳には、日焼け止めクリームをつけさせたいんです。でも学校は、よほど肌が弱い児童以外の日焼け止めクリームの使用は禁止していて。私自身、シミでずいぶん悩まされている1人。娘には今からケアして、健康な肌でいてほしいんですが……」
小学校のプールから児童たちの歓声が上がる、これからの季節。こんな悩み事が、ある母親から本誌に寄せられた。調べてみると、水泳の授業で、子供の日焼け対策に頭を悩ませているママは少なくないようだ。子供たちへの紫外線の影響について、日本臨床皮膚科医会・学校保健委員会委員長の島田辰彦先生(島田ひふ科院長)に聞いた。
「紫外線は、皮膚の細胞の遺伝子を傷つけます。また抵抗力も落ちるため、口の周囲に赤い水ぶくれができる『口唇ヘルペス』を発症することも。さらに長期的にみると、シミやシワといった肌の老化や、皮膚がんの発症率を高めます。また目にも影響があり、白内障を引き起こすことも。日光を浴びても黒く日焼けせず、赤くなるだけのタイプの児童は、紫外線の影響をより強く受けてしまいます。早急な対策が必要でしょう」
島田先生も所属する日本臨床皮膚科医会では’11年に、プールサイドにテントで日陰を作ったり、ラッシュガード(長袖水着)の着用を勧めたりするなど、プール授業での適切な紫外線対策を呼びかけている。またWHO(世界保健機関)も、皮膚がん予防のため、子供のうちから紫外線対策をすべきと提言している。
「水泳の授業が行われるのは、1年でもっとも紫外線量が多い時期。しかも10時から14時の間は、さらに紫外線が強くなる時間帯です。それなのに学校の対応は十分とはいえないのが現状。’08年に、日焼け止めの使用について、小学校の対応を調査しましたが、半数以上が『明確にせず』と回答する結果になりました。今も状況は改善されていないといっていいでしょう」
水泳で日焼け止めを禁止する学校が多いのは、クリームやオイルによってプールの水質が汚染されるという懸念があるからだ。
「生涯にわたり健康な肌を保つには、小さいうちからの紫外線ケアが大事です。沖縄と札幌で、小学6年生の児童が浴びる紫外線量を比べた結果、沖縄の児童は札幌の6割しか紫外線を浴びていませんでした。沖縄の紫外線の量は、札幌の2倍もあるにもかかわらずです。日差しの強い時間は屋外に出ないなど、沖縄の児童には日焼け予防の習慣があるのです。子供たちにそんな習慣を身につけさせたうえで、水泳の紫外線の対策については、文部科学省が明確な指針を出すべきです」