昨年の流行語大賞ベスト10にも入り、物議を醸した「保育園落ちた 日本死ね!!!」。この衝撃的なタイトルのブログが投稿されてから早1年。「保活」の過酷さはいまだに改善しているとは言い難いが、ここにきて少しずつ新しい動きも出始めている。異業種からの保育事業参入だ。
たとえば総合通販サイト「ベルメゾン」で知られる千趣会は、子会社がすでに首都圏6カ所で保育園を運営。今年4月には、東京都品川区にも許可保育園を開園予定だ。また、大手化粧品メーカーの資生堂も昨年11月、保育事業への参入を表明。事業所内保育所(※企業内や近辺に用意された、従業員向けの託児施設)の運営受託などに乗り出すという。
そんななか、とりわけ注目を集めているのが、「ファミリア プリスクール」だ。ファミリアといえば、創業者の1人である坂野惇子が、NHKの朝の連続ドラマ小説『べっぴんさん』のモデルとなったベビー子ども服メーカー。そのファミリアが、’15年4月に白金台(東京都港区)、’16年9月に夙川(兵庫県西宮市)と、相次いで保育園をオープンさせたのだ。
では、この“ファミリア保育園”の何が注目されているのかといえば、ギフトとしても人気のファミリア製品に囲まれた保育環境もさることながら、月23万円(1〜2歳/週5日/白金台)という高額な保育料だ。高級住宅地という立地ゆえではあるが、これはおそらく、いま日本でもっとも高い保育施設だという。
そもそも「プリスクール」とは、直訳すると「就学前の」という意味。アメリカでは幼稚園・保育園ともにプリスクールと呼ばれるが、日本では「英語で保育を行う施設」を指すこともある。ファミリア プリスクール(以下、ファミリア)は、いわゆる認可外保育園に分類されるが、やはりカリキュラムの筆頭に「英語」を挙げている。
《日本語と英語、両方をバランスよく取り入れ、インターナショナルな視野を持つ土台となりうる基本的な英語力とコミュニケーション力を培います》(HPより引用。《》は以下同)
さらにHPでは、《まだ見えない才能を、カタチにする》という理念の下、ほかにも「アート」「ボディコーディネーション」「表現ワーク」などといった、さまざまなカリキュラムが紹介されている。
そして、そのこだわりの一つひとつは、母体であるベビー子ども服「ファミリア」の姿と重なっても見える。『べっぴんさん』でも描かれたように、同社製品は他社のものよりも工程が多いというが、洋服でも保育でも「子どもたちのために手間ひまをかける」ことが徹底されているのだと思うと、妙に納得。実際、保育スタッフのほかにも各専門講師、カリキュラム・コーディネーターなどが関わっており、保育(というより、教育?)体制はまさに万全の構えだ。
こうして見てみると、さすがの充実ぶりがうかがえる同園だが、週5日保育で月23万円という保育料は、やはり高額だ。おむつや布団など、園で必要なものは子どもの成長に合わせて用意してくれるとはいうが、子育て中のパパ・ママからの第一声は、大多数が「高い!」。もちろん、「お金さえあれば入れたい!」という声もあるが……。
今回、残念ながら本誌の取材は受けてもらえなかったが、“街の声”が賛否両論に割れることは、同社にとってすでに織り込み済みのことだったと思われるフシがある。先日、本誌のインタビュー取材を受けた、坂野惇子さんの孫で現社長の岡崎忠彦さん(47)が、次のように語っているのだ。
「祖母はよく僕に、『無駄とぜいたくは違う』と言っていました。『ぜいたくは文化を生むけど、無駄は何も生まない』ってね」
だとすると、このこだわりあふれるプリスクールも、創業者である“べっぴんさん”の理念を受け継ぐ、“文化を生む保育園”だということなのかもしれない。プリスクール以外にも、妊娠中のプレママから、2歳以下の子どもを持つお母さんへの育児サポート事業も展開しているという同社。“べっぴんさん”が日本の子ども服を変えてきたように、いずれ日本の保育事業も、このファミリアが変えていく……かも!?