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「ワンオペ育児」という言葉をご存知だろうか?人手不足に苦しむ外食産業などで、従業員ひとりでお店を切り盛りする状況(ワンオペレーション)をなぞらえた用語で、「夫婦どちらか(大抵は妻)がひとりで育児を抱え込む状況」を指す。たしかに、イクメンといってもまだまだ少数派だ。

 

・夫がまったく育児に無関心

・夫が単身赴任中

・夫がブラック企業勤務

・シングルマザーである

 

といった理由で、たったひとりで育児負担を抱えているママは多いかもしれない。ましてそれがワーママ(働くママ)だった場合はなおさら辛い状況だろう。

 

そんな方に朗報かもしれない。浜屋祐子氏の東京大学大学院・学際情報学府修士論文「共働き正社員の協同連携型育児がリーダーシップ行動の変化に与える影響の考察」という調査研究によって、「育児は仕事の役に立つ」ということが実証的に分析されたのである。

 

子どもが生まれ、育児をすることで「とにかく仕事を早く仕上げて、効率的になった」という方は多いかもしれない。しかしこの調査ではそれだけでなく、「チーム育児」という新しい概念によって職場におけるリーダーシップや業務能力へ良い影響を与えること、またマネジメント的役割を担うことの魅力を認識することにつながることも明らかにしたのだ。

 

この「チーム育児」とは冒頭の「ワンオペ育児」とは対極にある環境のことで、「夫婦を中心とするチームで取り組む育児」のことを指す。共働きしながら育児をする人が増加する中、育児はもはやママ一人で抱え込むものではない。父親と母親、祖父母、親戚、さらには保育園や地域までを含む、さまざまなサポートを得て行うことが必要になってきている。

 

この「夫婦を中心として育児を支えるメンバー」を「チーム」と捉え、家庭内での協力や育児情報の共有、家庭街の機関との連携を通してさまざまな人々と育児というプロジェクトを達成する。「チーム育児」はそうした新しい育児モデルだ。ともすれば「仕事の邪魔」だと思われることもある育児が、仕事上の「能力向上」につながるというのである。

 

世の働くママたちの中には、育児によって仕事がなかなかできずに後ろめたい気持ちをお持ちの方もいるかもしれない。だが長い目で見れば、キャリアや能力の発達に対してポジティブな効果を持っている――。このことを知ることは、ひとつの福音になるだろう。

 

本研究は、浜屋祐子氏とその指導教官である東京大学の中原淳氏の共著として出版された。対談がベースとなっており、「育児は仕事の役に立つ」研究結果をわかりやすく解説。「家庭→仕事→子育て」がうまく回るようになるノウハウも満載だ。子育て世代だけではなく、現場マネジャー、人事部・総務部・経営企画部の方も必読な、これからの「新しい働き方」を考える際に欠かせない一冊となっている。

 

 

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『育児は仕事の役に立つ――「ワンオペ育児」から「チーム育児」へ』は光文社より発売中(税込760円)

 

 

 

著者プロフィール


浜屋 祐子

国際基督教大学教養学部卒業後、企業勤務を経て、東京大学大学院修士課程修了(学際情報学)。現在は経営教育事業に携わるとともに、はたらく大人の学びに関する研究を続けている。著書に『人材開発研究大全』(共著、東京大学出版会)など。

 

中原 淳

東京大学大学総合教育研究センター准教授。一九七五年北海道生まれ。「大人の学びを科学する」をテーマに、人材開発・リーダー開発について研究。著書に、『リフレクティブ・マネジャー』『会社の中はジレンマだらけ』(ともに共著、光文社新書)など多数。

 

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