(写真:吉澤健太)
■『助けて』と上手に言えない現代人
いま、あなたは『助けて』と言えるだろうか? 仕事、家事、育児、勉強、人間関係……、頑張りすぎてしまう人ほど、この一言が言えなかったりする。
【チェックリスト】
□自分だけが損をしていると感じる
□許せない人がいる
□自分に嫌いなところがある
□他人の目や噂が気になる
□仕事と家庭のうち、「仕事」を優先する
□自分のまわりにいつも嫌な人がいる
□仕事を一人で抱えていっぱいになる
どれか一つでも当てはまるのなら『光と影の法則』という本を手に取ってみてほしい。
■人気カウンセラーの“原点”的な一冊
同書は心理カウンセラー・心屋仁之助さんが2009年に上梓した物語形式の書籍だ。2014年に“完全版”として加筆され、この秋、文庫化されている(『光と影の法則 文庫版』光文社 知恵の森文庫)。
「この本は、僕の考えのすべてが詰まった一冊と言えます」
と話すのは、著者の心屋仁之助さん。
「本書の主人公は会社勤めの既婚女性で、子供はいない。仕事もプライベートも努力していて、上司に“気に入られたい”と一生懸命に働き、夫婦関係も良くしたいと思う。なのに実際には、上司から怒鳴られ、夫からは暴言をぶつけられてしまう」(心屋さん/以下同)
頑張っているのに認められない生活はヒロインの心身を蝕み、いつしか彼女は、上司や夫に先に謝るようになる。相手の怒りが収まるのを、じっと待つようになるのだ。
「そうなる過程で、彼女は会社の同僚に聞くんですよ。『あの上司、おかしいよね? 怖いよね』って。でも共感してくれない。そこで彼女は『“私だけ”が嫌われているんだ』、『“私だけ”が感じる恐怖なんだ』って、次第に何も言えなくなっていくんです」
■著者自身も、かつては同じだったというリアル感
身近に聞いたことがあるような、胸が苦しくなるリアルさがあるが、それもそのはず。本書にはモデルとなった女性がいるという。
「僕のセミナーに参加してくれた、ある女性がモデルです。そして僕自身も、かつては彼女と同じでした。仕事に、時間に追われ、口を開けば愚痴や『人のせい』にする、不満の言葉ばかり。被害者意識を抱きながらすべての原因を自分以外に求めていました」
心理カウンセラーとして活躍する今の心屋さんからは想像しづらいが、かつてはご自身も、この本で描かれているような身のまわりの人間関係に苦しみ、試行錯誤を繰り返したという。
■1冊の本との出逢いが人生を変えることもある
ヒロインが『助けて』と言えずに涙ぐむシーンも描かれている。
「主人公の悩みを聞いてくれる“義理のお兄さん”とのやり取りですね。義兄はヒロインに『今できることから始めよう』として『まずちょっと、いま“助けて”って言ってみて』と、言葉に出してみることを勧めます。でもヒロインは、その一言がどうしても口に出せない。『何で言えないんだろう……』と、自分でも驚きながら、泣いてしまう。皆さんはどうでしょう? いま、『助けて』って、すぐに口に出せますかね。結構難しいですよね」
確かに、意外と口に出しづらい一言だ。
「ヒロインにとって『助けて』とは、自分が過去から引きずっていた“影”に繋がる、口に出せない言葉でした。人間、本当に恐怖を感じていることを言葉にするのは難しいんです」
リアルな人間関係に悩むヒロインがどのような結末を迎えるのかは、本書に譲るとして、心屋さんがこの物語で伝えたかった事とは?
「成功などの輝かしい“光”だけでなく、自分の“影”も受け入れていこうよ、ということ。“影”とは人それぞれですが、小さいころからの“怒り”や“寂しさ”、“認めて欲しい”という欲ということが多いです。もし今、何かに行き詰っているのなら、自分の過去と向き合うのも一つの方法ではないでしょうか。僕自身、一冊の本に出会って『すべての原因は自分にあったのでは?』と気づくことできました。本書もそんな誰かのきっかけになれれば、嬉しいなと思っています」
【著者略歴】
心屋仁之助(こころやじんのすけ)
「自分の性格を変えることで問題を解決する」という「性格リフォーム」の心理カウンセラー。19年間大手企業で働き管理職まで務めたが、退職。その後、自分や家族の問題がきっかけとなり、心理療法を学び始める。現在は京都を拠点として、全国各地でセミナー活動やカウンセリングスクールを運営。著書多数。