「円安の影響で輸入品やガソリン、電気料金も高騰が続き支出は増える一方ですが、高齢者の収入源である公的年金が10月から減額されます。これは昨年11月に成立した法律によるもので、今年10月に1%、来年4月に1%、再来年’15年4月に0.5%と、3段階に分け計2.5%の引き下げが決定しています」

 

こう話すのは経済ジャーナリストの荻原博子さん。荻原さんによると、厚生年金の標準世帯である夫婦2人分で、現在の月額23万940円が、10月分からは22万8,591円、来年4月からは22万6,216円、’15年4月には22万5,040円に。現在の支給額と’15年4月以降を比べると、月額で5,900円、年間7万800円減ることになる。

 

また、老齢基礎年金(いわゆる国民年金)満額の人では、現在の1人分月額6万5,541円から’15年4月には6万3,866になり、月額で1,675円、年間2万100円減ることになる。なぜ今、年金が減額されるのか。原因は’00年ごろの施策にさかのぼる。

 

「もともと年金は、物価の変動率に合わせて支給額を毎年見直す物価スライド方式でした。ですが’99年から’01年ごろ、物価が下落したにもかかわらず、当時の政府は景気に配慮し特例措置をとり、年金を引き下げなかったのです。政府は年金財源を改善するため、物価を水準にした額より高い2.5%を払いすぎとしてその分引き下げようとしています。これは年金だけで暮らしている高齢者にとって唐突な引き下げであり、死活問題です」

 

さらに’04年に、年金を支える現役世代の減少(保険収入の減少)や平均余命の伸び(保険支出の増大)を年金額に反映させるマクロ経済スライドが導入されたため、現在、物価が1%上がっても年金は0.1%しか上がらない。

 

「たとえば、昨年の60歳以上の無職世帯の消費支出は、年間約246万円(総務省『家計調査』による)。今年物価が1%上がったとすると、2万4,600円年間支出が増える計算ですが、年金は2,460しか増えません。差額の2万円余りが持ち出しとなり、生活を圧迫します。また現在検討中の、70〜74歳までの医療費負担を現行の1割から2割に引き上げる施策は、来年度からの実施を目指しているので、今後も高齢者の負担はますます増えるでしょう」

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