有史以前の人類が「オブシディアン」を道具として使用したのは、矢尻や短剣類であったとされています。オブシディアンはモース硬度こそ「5」という中程度の硬さですが、この岩石が割れた際にできる切り口は鋭い刃物そのもの。それゆえ、人々が狩猟や獲物の解体に利用したのではないかと思われます。
一方、オブシディアンの光沢のあるガラス質という特徴を生かした道具もあります。その代表が「鏡」です。オブシディアンの平面を磨き上げることによって、水面に自分の姿を映すのと同様な使い方をしていたのでしょう。ところが、ここで注目すべきなのは、メキシコでは「オブシディアン」の鏡は単に自分の姿を映すだけのものではなかったこと。この鏡を用いて占いが行われていたという言い伝えがあるのです。また、ヨーロッパには、オブシディアンから天使からのメッセージが得られるという話もあるようですよ。
このように、「オブシディアン」には単なる石を超えた魔力があると、昔の人々は感じていました。そしてもちろん、今日でも「オブシディアン」のパワーを信じる人々は多いのです。そのオブシディアンのパワーとは、精神療法でしばしば試みられるカタルシス効果に等しいとされています。そもそも「カタルシス」とはアリストテレスが用いた言葉。心の中に抑圧されている感情を放出させることによって、心を軽快にさせる……言わば「癒し」や「浄化」という効果を意味しています。
ではいったい、「オブシディアン」と共振するとどのようなことが起こるのでしょうか? 不思議なことに、あなた自身が捉えていない無意識の世界、つまり心の奥深くに沈殿しているネガティブな思考や、過去の嫌な経験に起因するトラウマが次第にはっきりしたイメージとなって浮上してきます。あなたはこの浮上するものから目を離すことができず、自分の中にあるそうしたイヤな部分としっかり対峙しなければならなくなります。それは辛く苦しい時間でしょう。でも、やがてそれらを心の中で整理し、必ず乗り越えられるはずです。そしてその後に、今まで考えられなかったような平安と安らぎが訪れるでしょう。
でも実は、「オブシディアン」のこの効能は諸刃の剣でもあるのです。もしあなたがネガティブ思考やトラウマを乗り越えられなかったとしたら、逆に辛い思考の沼へ引きずり込まれてしまうからです。ですから、「オブシディアン」に近寄るのは、あなたの体調が万全で、精神的にも前向きなときだけにしましょう。単なる興味本位だけで手に入れると、「オブシディアン」は大変危険な石だということを心に銘記しておいてくださいね。
なお、私自身は、「オブシディアン」を身近に置いたり、掌に握ったりした結果、上記のような辛い思いをしたことはありません。むしろ「判断に迷うことがなくなる」、「すっきりした気分で仕事に集中できる」、「血行が良くなり冷えやむくみが解消される」といったことを実感しています。