動画を編集するアスファルト城間さん 画像を見る

 

インターネットの動画投稿サイトで、さまざまな動画を公開するYouTuber(ユーチューバー)。子どもたちの「将来の夢」にも挙げられる人気職業だ。沖縄にも多彩な動画を公開しているユーチューバーがいるようだ。

 

さらにここ数年、コンピューターグラフィックス(CG)で描かれたキャラクター「Vtuber(ブイチューバー)」が登場する動画もネットにあふれている。

 

それらの動画はどうやって作っているのだろう。担い手の皆さんに迫ってみた。

 

制作動画37万超再生 アスファルト城間さん

 

「フグ田君、どーだい軽く今晩?」「奥さんにきっと怒られるぞ」

「サザエさん」のアナゴさんとマスオさんがラップで対決する「MCバトル」を繰り広げる。ユーチューブで37万回以上再生されている動画を作ったのは、人気ユーチューバーのアスファルト城間さん(31)だ。

 

昔からラップが好きだった城間さん。「一人でMCバトルをするにはどうしたらいいか」と考えるうち「絶対にない組み合わせでやろう」とこの動画を作った。5年前の公開以来、再生回数はうなぎ上りだ。

 

きっかけは2012年、友人の披露宴に向けた余興動画をミュージックビデオ風に作ったことだ。再生回数が増え、面白さに気づいた。地元の西原町をテーマに「にしはら音頭」も公開し、1年後には西原町教育委員会と協力して「SAWAFUJIマーチ」も作った。「町役場から連絡があった時は怒られると思ったが、褒められてびっくりした」と振り返る。

 

動画の撮影、編集には丸一日かかるが「ねた探しの方が大変。あまり見てもらえない動画や、予想外に再生数が伸びた動画もある」と語る。現在のユーチューブチャンネル登録者数は6千人に迫る。

 

16年にはユーチューバーを集めたトークイベントも主催した。「ユーチューブは目的ではなくきっかけ。先に道が広がっている。今後も僕でなければ発信できない動画を模索したい」と語った。

 

仮想キャラ、沖縄PR 玉那覇はるか

 

生身の人間が登場する動画だけでなく、CGのキャラクター「Vチューバー」も人気だ。「バーチャル・ユーチューバー」の略で、人間が体を動かす様子を撮影し、モーションキャプチャーと呼ばれる技術でCGに反映させることでキャラクターを動かす。声や効果音、BGMも吹き込む。

 

全国的に人気のキャラクターに「キズナアイ」などがあるが、沖縄では「玉那覇はるか」が那覇市とタイアップして沖縄観光をPRしている。はるかは15歳の高校生で、歌や踊りが得意だ。ユーチューブで番組を公開しているほか、てんぶす那覇の大型ビジョンで那覇の魅力を紹介している。

 

はるかの生みの親、インタラクティブラボラトリー沖縄(うるま市)の武田政樹会長は「既存の観光PR動画でも、沖縄ならではのキャラクターが紹介すれば多くの人が見てくれる。新技術で観光とITを結び付け、多くの人に沖縄を訪れてほしい」と話す。はるかは将来、英語や中国語などで海外にも発信する予定で、コラボレーションできる企業や団体を募集中だ。

 

夢追う人の魅力紹介 佐久本健太朗さん

 

頑張っている人に夢を語ってもらうユーチューブチャンネル「まとばTV」のディレクターを務めるのは、2015年から活動する佐久本健太朗さん(32)だ。

 

きっかけはバンドで活動する先輩を紹介するため動画を作ったこと。「沖縄の第一線で活躍し、夢を追っている人を紹介したい」とさまざまな人に取材を重ねる。

 

再生回数が増えたのは那覇市の駄菓子が食べられるバーを訪ねた動画や友人の占い師を紹介した動画、佐久本さんの結婚を発表した記者会見風動画など。

 

見やすい動画作りを模索し、3~5分の短い動画に効果音やテロップを入れるようになった。編集時間は「3分の動画で8時間だと短い方」という。

 

劇団を紹介する動画を公開すると、見た人がその劇団に入り「おかげでやりたいことが見つかりました」と報告を受けたこともあるという。「尻込みしていた人にも勇気を出してもらえる動画を今後も作りたい」と話した。

 

Vチューバー作成の卵 伊波礼扇、喜久山風花、宮国大輔さん

 

Vチューバーを作るにはCG製作や声を担当する人材のほか、人の動きをCGに反映させる機材も必要だ。ただ近年は機材が安価になり、個人で作られた動画も増えてきた。

 

Vチューバーの発想や技術を競う大会「Vチューバーハッカソン」が昨年12月、東京で開かれ、沖縄の学生6人でつくるチームが出場。独自のキャラクターがゴーヤーチャンプルーを作る動画を出品し「バ美ボ賞(バーチャル美少女ボイス賞)」を受賞した。動画の特徴はCGでゴーヤーチャンプルーを描く過程も公開し、CG製作のハウツー動画を兼ねている点だ。

 

伊波礼扇(れいみ)さん(沖縄国際大学2年)は「自分の描いたキャラが動いているのを見て感動した」と話す。宮国大輔さん(ITカレッジ沖縄2年)は「うまく動かなかったところもあるので、また大会があれば挑戦したい」と話した。

 

人気動画の陰に努力あり

 

ユーチューバーの動画は多岐にわたるが、テレビのバラエティー番組のようにさまざまな企画に挑戦する番組が人気を集めている。スマートフォンがあれば撮影、公開が可能。ただ質を上げるには撮影機材や編集ソフト、パソコンの性能も問われる。多くの人に見てもらうには企画の面白さ、動画を見やすく編集する技術も必要だ。

 

再生数が増えれば広告収入も得られるが、基準は厳しい。再生数10万回を超える動画を複数公開しているユーチューバーでも「お小遣い程度」と言われる。

 

アスファルト城間さんは「バラエティー系は飽和状態。趣味などの強みを生かしたノウハウ系が好まれる。DIY(日曜大工)や美容師の技術、魚をさばく動画なども求めている人が多くいるかもしれない」と語る。

 

一方、スマホ一つで発信できるほど敷居が低くなったが「匿名で発信しても身元がばれることはある。リスクを避ける注意は必要だ」と呼び掛ける。

(2019年1月13日 琉球新報掲載)

【関連画像】

関連カテゴリー:
関連タグ: