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「完成披露試写会の舞台挨拶はとても新鮮でした。『この気持ちは、いったいなんだろう!? 』と自分のなかでも経験したことのない感情が湧き出てきたんです。日本のファンのみなさんと映画を通してお目にかかれるなんてまったく想像していなかったので感無量でした」

 

そう語るのは、2月16日公開の映画『デッドエンドの思い出』でヒロインを演じた少女時代のスヨン(29)。作家・吉本ばなな氏(54)の同名小説をもとに日韓共同で製作された本作で、婚約者を追いかけて名古屋にやってくる韓国人女性・ユミを演じた。

 

「お芝居に影響が出ないよう、撮影中はなるべく主演のプレッシャーは感じないように努めました。しかし舞台挨拶やプロモーションともなると、逆に責任感を持たなきゃいけないような気がしています」

 

国内はもとより海外でも高い人気を誇る吉本作品のなかでも、作家自ら傑作と語る短編小説の実写映画化。流暢な日本語を操り、初の映画主演をはたした。

 

「実は少女時代の活動よりも前に日本でデビューしていたので、仕事の原点は日本だという思いが強いんです。しかも韓国でも有名な吉本ばなな先生の原作という貴重なチャンスにめぐまれ、本当に光栄だと思っています」

 

昨年12月に行われた完成披露試写会の舞台挨拶では、原作者の吉本氏も一緒に登壇。

 

「吉本先生から『原作のまんまのキャラクターをリアルに演じてくれました』という賛辞をいただいたときはうれしすぎて、『私の人生でなにが起こっているんだ!』とわからなくなってしまったくらいでした(笑)」

スヨンが演じたヒロインのユミは30歳目前でごく普通の日々を送っていた女性だったが、恋人に裏切られ大きな絶望感に襲われる。

 

「ユミを演じながら、自分の人生でこんな絶望を味わったことがないと気づきました。いっぽう深い傷を負いながらも現実から逃げずにいまの自分ときちんと向き合うところは、ユミと自分は似ていると思いました」

 

そんなスヨンも30代を目前にした女性のひとり。アイドルグループのメンバーとしてトップの座に君臨した20代を経て、これから迎える30代をどのような気持ちで過ごしたいかと訊くと次のように語った。

 

「20代のときは『30歳になったら、このくらいのレベルに達しているだろう』と想像し、思い込んでいた部分があったんですね。30代に特別な意味を与え過ぎていたというか。お仕事の依頼がきても『もうすぐ30歳の私がやるの?』と思ったり、その逆に、いまはまだ諦めなきゃいけないことが30代になったらできるだろうと考えたり。でも実際にその年齢になってみると、なんてこともなくて、ただ数字が変わっただけだなと(笑)」

 

そして、いままでにない余裕も生まれたとも。

 

「一度力を抜いてみよう。ちょっと遠回りしてもいいんじゃないか。そういう気持ちになったら、できることがたくさん見えてきたような気がしています。自分の人生のなかのある段階のひとつというか、成長の一過程に過ぎないということを実感して。30代は特別ななにかでも、美しいものでもないという考え方になったら肩の荷が降りました。そしていま、30代を目前にこういう気持ちになれたことこそ私の宝物です」

 

傷心のユミがあてもなく名古屋の街をさまよい、たどり着いた場所が “エンドポイント”(行き止まり)という名の小さなカフェ。新たな出会いに支えられ、彼女は以前よりも自分らしく未来に向かって歩み出す。誰もが一度は迷い込む袋小路も悪いことばかりではない、と教えてくれる。

 

「この作品のお話は、誰にでも起こりうる出来事だと思います。どんなにつらいことも、あとで振り返ってみるとなんでもなかったと感じるものかもしれない。そして、そういう試練を味わったからこそ人間は成長するきっかけをもらうんだよ、と。そんなことに気づけていただけたらいいなあと思います」

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