【うるま】米軍嘉手納基地を飛び立ったジェット機がうるま市石川(旧石川市)の住宅地と宮森小学校に墜落し、18人が命を落とした事故から6月30日で60年。石川中学校の巡回教員だった当時、事故直後の墜落現場に駆け付けた伊波則雄さん(81)=読谷村=はこのほど、当時の様子を大きなキャンバスに描いた油絵を完成させた。「頭の中の記憶をぶちまけたかった」。独自の取り組みを終え、完成を喜ぶと同時に、悲惨な事故を次代に伝える大切さを改めて確認した。
伊波さんは、事故の惨状を目の当たりにした。石川中に勤務する前は宮森小で働いており、犠牲者の中には教え子もいた。今回、事故を語り継ぐ「石川・宮森630会」の久高政治会長から依頼があり、筆を取った。60年前の記憶をたぐり寄せ、縦130センチ、横160センチの大きなキャンバスに3カ月かけて描いた。
途中、体調を崩して断念しかけたこともある。しかし「脳裏に焼き付いている記憶をきちんと形にしなければいけない」との思いが勝り、何とか最後まで描き上げることができた。墜落しバラバラになった機体の残骸を大きく絵の中心に据え、犠牲になった生徒12人の姿も描いた。絵の左上には「人が燃えてる 人が倒れてる 血を流してる」などの言葉も書き添え、より具体的に描写した。
もうすぐ事故から60年が経過する。若い頃から絵を描いてきた伊波さんは「絵で語り継ぐことが自分なりの方法だ」と話す。絵を通し、次の世代へ事故の記憶を継承していく考えだ。
うるま市の石川歴史民俗資料館では6月1~30日、同事故に関する資料展示会があり、伊波さんの絵も展示される予定。多くの人の観賞を望む伊波さんは「二度とこういう事故があってはならないという気持ちが芽生えてくれたらうれしい」と静かに語った。(砂川博範)