「そうはいっても、今は芝居でも映画でも、ひとつの仕事に集中して取り組めるようになったので、仕事に対しての向き合い方は変わってきましたね。もちろん同時にいろんなことをやらなければ生まれないものもあるし、時間をかければいいというものでもない。でも、それはすでに今までやってきたことですから。僕はひとつのことに集中して時間をかけるほうが好きなので、今いいペースでやらせてもらっています」
そう語るのは、この夏、東京・日本青年館ホールで上演される舞台『君の輝く夜に~FREE TIME,SHOW TIME~』(8月30日~9月23日まで)の稽古中の稲垣吾郎(45)。昨年夏、京都で上演した同舞台は、ひとつの恋を失った男が新たに3人の女性と出会う大人の恋の物語。
「歴史ある京都の劇場で始まった公演が、東京の日本青年館ホールという最新の劇場で上演できることも楽しみですね。劇場の周辺は、国立競技場を含め、以前の面影もないほど変わっていますから。2020年に向けて盛り上がっているホットな場所でお芝居できることも、うれしいですね」
そんな情熱を込めて臨む舞台だけでなく、最近ではSNSやネットメディアなど新たなフィールドへと活躍の場を広げている稲垣。
「新しく始めたものの中でも、SNSというツールは大きいですね。ファンの方との距離がより縮まりましたし、新しく僕たちに興味を持ってくれる方も少しずつ増えてきたと言う実感があります。リアルタイムでやりとりできるということも、楽しんでいます」
環境の変化にも柔軟に対応する姿勢が印象的な稲垣。プライベートではどうなのだろうか。
「自分のペースでゆるく穏やかに過ごすことが好きで。なくなっていってしまうものは仕方がないけれど、新しいもののために古いものを捨てなきゃいけないというような割り切りや潔さは、僕にはあまりないんです。未練があってもいいんじゃないかなって。男女の恋においても、別れた後は一切連絡をとらないという方もいますが、僕は離れたとしても絶縁することはないんじゃない? というタイプ。ただ、人との絆を捨てることはないけど、物は増えていってしまうので、どこかで捨てなきゃなとは思いますね。実際には、服とか食器とか、眼鏡も度が合わなくなっても捨てられなかったり。携帯のフォルダの中の写真もそう。本とか映画のDVDとか、自分が影響を受けたものも手放せないですし。台本なんかはすぐ捨てちゃうんですけどね(笑)」
穏やかにたゆたうような生き方を好む稲垣が、人生における大きな決断をして約2年。最後に、草なぎ剛、香取慎吾と始動した“新しい地図”として、3人の目指すところを聞いた。
「これからのことははっきり決まってないっていうのが現状ですね。志は一緒でも微妙な温度差があったりもして、完全に統一するのは難しい。でも、そこは人間、個性ですから。それぞれ違うからこそ面白いですよね。京都に草なぎくんの舞台を見に行って3人で食事をしたんですが、そのとき、香取くんが茶筒をプレゼントしてくれたんです。今まで食器や花瓶も“洋”のものが多かったのですが、“和”も面白いなと。これからは日本の伝統文化についても勉強が必要かなと思っています」