10月22日の即位パレードは国を挙げての大イベントになる。そんな華麗なパレードの場に限らず、ご公務で地方にいらしたときなどニュースに映る雅子さまや皇族方に寄り添う黒スーツに身を固めた女性たち。過酷な訓練に励む日々を過ごす彼女たちは皇宮警察の皇宮護衛官だ。なぜ、皇族警護の仕事を選んだのか? 女性皇宮護衛官の本音に迫ってみた――。
天皇皇后両陛下がお暮らしになる赤坂御用地にある赤坂護衛署の地下。分厚いコンクリート壁に囲まれた静謐な一区画で、セミロングの髪を後ろで束ねた小柄な女性がゆっくりと右腕を水平に向けた。その手に握られたピストルの照準は10メートル先の小さな的にピタリと合わされていた――。
秋の全国競技会に向けてエアピストルの射撃訓練に余念がないのは小池梨奈さん(25)。彼女は皇宮警察・赤坂護衛署に勤務する巡査長皇宮巡査で、皇宮護衛官(※皇宮警察では警察官とは呼ばない)となって4年目の若手ホープだ。
「実は就活するまで皇宮警察の存在を知りませんでした。人事院のホームページに皇宮護衛官が紹介されていて、大学で日本史専攻でしたから、勤務地の1つに京都御所があるのが魅力的だなと。合格したときは、友人から『インドア派なのに大丈夫?』と心配されました」
小池さんが就職先に選んだ皇宮警察は、両陛下や秋篠宮家など皇族方をお守りする「護衛部」、皇居や赤坂御用地、御用邸などの警備に当たる「警備部」、組織運営に携わる「警務部」からなる、皇族方の守護を専門とする国内唯一の組織だ。
「側衛に加えてオートバイの側車や白バイ、騎馬など場面に応じた形で護衛にあたります。皇宮護衛官は国家公務員となり定員は900人ほど、女性は全体の1割程度です。皇宮警察学校では情操教育として和歌に華道、茶道といった教養も身に付けることが求められます」(皇宮警察本部広報担当)
小池さんの場合、皇宮警察学校での射撃で好成績を残したことから、卒業後は護衛署勤務のかたわら、射撃訓練員にも選抜された。
「中学時代に弓道をしていたのがよかったのかもしれません。集中力が求められ精神面でかなり疲れますが、肉体面はそれほどでもないので、バランスをとるためによく皇居外周をランニングしています」
射撃訓練は泊まり勤務の翌日の非番の日に行うというが、通常の業務は皇宮護衛官の基礎である警戒勤務が主だという。
「皇宮護衛官になったばかりのころ、東宮御所の正門で警戒勤務中に、初めて天皇皇后両陛下(当時は皇太子ご夫妻)がお車で通られたときのことが今も忘れられません。皇后陛下は笑顔でいらして……緊張しすぎて、立っているだけで精いっぱいでした。夜には門の近くの茂みからカサカサと物音がしてライトを向けると、タヌキやハクビシンが走り去る姿が見えて和んでいます(笑)」
夜勤に加えて射撃訓練にもいそしむ小池さんだが、将来見据えているのは、皇宮護衛官の花形だ。
「両陛下や皇族方をおそばで警護する側衛官はひとつの目標です。ただ、あまりそれにとらわれすぎないようにと……。向上心を持ち続け、努力を続けることが大切だと考えて、日々取り組んでいます」
『女性自身』皇室SPECIAL即位記念号「雅子さま 輝く笑顔が時代をひらく!」より