日本銀行那覇支店(桑原康二支店長)は20日、特別リポートを発表し、住宅や商業施設、宿泊施設の需給について供給過剰が生じている可能性を指摘した。県経済全体では需要は順調に拡大しているが、人口の増加など沖縄の成長力を見込んだ県外、海外企業の進出によって競争が激化し、個別の企業レベルで収益性が悪化していく恐れもあるという。
住宅需要は、人口や世帯数の増加を背景に基調としては増え続けている。一方で県外企業の積極的な営業活動などにより建設も相次ぎ、新設住宅着工戸数のうち6割以上のウエートを占める貸家を中心に「供給過剰の状態になっている」と指摘した。
地域別では県外企業を中心に相続税対策のアパート建設などが盛んだった中部(沖縄市とうるま市)の着工戸数が、県全体と比べても弱めの動きに転じている。稼働率は県外と比べて高めの水準を保っている。
商業施設は、サンエー浦添西海岸パルコシティの開業やセブン―イレブンの進出など競争が激化している。7、8月の百貨店・スーパーの売上高は、全店ベースはプラスだったが既存店ベースではマイナスとなり、企業からは「自社店舗間の競合も生じている」という声も出ているという。日銀那覇支店は「供給過剰の状態が発生しつつある可能性もうかがわれる」としている。
ホテルは客室稼働率で8割前後の高水準を維持しているが、前年同月を下回る月が増えている。同支店の調査では、18年10月~19年9月の1年間で前年同月を上回ったのは2回だけだった。ただ、那覇空港第2滑走路が20年3月に供用開始となり、観光客全体の増加が見込まれることから「近いうちに県内の宿泊施設が供給過剰の状態に陥るとは考えにくい」としている。企業からは先行きを警戒する声も出ているという。
桑原支店長は「景気の良い今のうちに収益性を向上させ、もうける力を高めることが大事だ」と話した。