ピンクのサンバイザーとデニムスタイルがトレードマークの知念美佐子さん=24日、那覇市の与儀公園前の販売車前 画像を見る

 

沖縄県那覇市の与儀公園前で約50年間、黄金色に輝く焼き芋を販売してきた軽トラックの石焼き芋販売店が30日、閉店する。日本復帰前に販売を始めた両親の後を継ぎ、1987年から車の前に立ち続けた知念美佐子さん(70)は「みんなに親しまれて、本当に楽しかった」と振り返り、笑顔で最後の営業日を迎えようと意気込んでいる。

 

創業当時から変わらず車の定位置は与儀公園の入り口。沖縄赤十字病院の向かいで販売を続ける。「なぜここなのか、経緯は分からない」と話すが、与儀の名物として長年親しまれてきた。客の好みに合わせて「硬め」と「軟らかめ」を用意。名護から訪れる常連客もいる人気商品で「ここの芋しか食べられない」と言う人もいる。

 

閉店理由は「そろそろ少し休みたい」。休みは旧盆のウークイと正月三が日、台風の日のみ。週に2日はアルバイトに店番を任せているが、毎日の仕込み作業は知念さんの仕事。午前9時半の開店に合わせ、早朝5時半には仕込みを始める生活を続けてきた。車検の時期も重なり「自分の時間も欲しい。今が一番いい時期」と閉店を決めた。

 

車の周りは人々の憩いの場所に。知念さんと常連客は、この空間を「青空喫茶店」と表現する。1人が立ち止まると次々顔見知りが集まり、ゆんたくを楽しんだ。公園で遊ぶ子どもたちも自然と集まった。「みんな、やーにんじゅー(家族)みたい。それが楽しい」と話す。

 

常連客の嘉手納郁子さん(67)は「ここを通るたびに美佐子さんが手を振ってくれる。みんなと人生相談をする時間が幸せだった」と閉店を惜しむ。

 

知念さんは今後、短時間で働けるパートの仕事を探し、自由な時間を増やしたいという。「趣味の三線をまた弾きたい。スポーツジムにも行きたい」と次のステップに夢が膨らむ。「頑張りました」とすがすがしい表情で語る知念さんの、ほくほくで温かい気持ちが染み込んだ石焼き芋を味わえるのは、あと数日だ。
(上里あやめ)

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