今年も多くの偉大なスタ―が、たくさんの思い出をわれわれに残してこの世を去った。そんな故人と親交が深かった方々から届いた、愛あふれるラストメッセ―ジを紹介。題して、「大好きなあなたへ 最後のラブレタ―」ーー在りし日の姿に、心からの哀悼の意を表して。
■市原悦子さん(享年82・女優・1月12日没)へ。佐藤B作(70・俳優)
2時間ドラマで何度となく共演。火曜サスペンス劇場『逃げる!』(’89年)という作品では、愛人の役で一緒にお風呂に入ったこともありました(笑)。
物語は、恋の逃避行を続けるうちに殺し合いを始めるという展開。僕が市原さんを湖に引きずり込もうとする場面で、リハ―サルのときに「B作さん、やりすぎよ」と市原さんがおっしゃった。でも、本番で僕が思い切りやってしまったものだから、カットがかかった瞬間、「いや~もう! なんて人なの!」っておかんむり。それで今度、市原さんが僕を殺そうと棒で殴る場面になると本気でバンバン殴ってきて、もう半端なかった(笑)。すっかり嫌われたと思いましたよ。もう共演はないだろうって。
それが12年後、「舞台を一緒にやりませんか?」とお誘いを受けて、本当に驚きました。しかも、二人芝居で、演出は市原さんのご主人(演出家の故・塩見哲さん)。
地方公演があったり再演もあったりで、そこで僕は市原悦子という女優のエネルギ―を思い知りました。
稽古は初日から本番のようなテンション。ベテランがこれほど全力で稽古をやるのかと感激しました。つねに本気以上、120%の女優。一緒に芝居して楽しいけれど、正直、すごく疲れる(笑)。そのうえ、本番よりも稽古が大好きでしたね。
「ずっと稽古をしていたい。初日なんてこなくていいわ」とよくおっしゃった。作り上げる作業が楽しくて仕方がない。まさに芸術家です。
ご主人のダメ出しには、素直に「ハイ! ハイ!」とまるで駆け出し女優のような受け答え。心底ほれているんだなあって思って見ていました。
残念ながら、2年前のドラマが最後の共演となってしまいました。撮影が終わった後に一緒にお食事したのがつい昨日のことのように思い出されます。また一緒にお芝居したかったですよ、もっとぶってほしかった(笑)。
「女性自身」2019年12月24日号 掲載