政府は今、「全世代型社会保障」を進めようとしている。これまで高齢者福祉に偏りがちだった社会保障を、子どもや現役世代も含めたすべての年代が満足できるものに変えていこうという。幼児教育の無償化がその一端だが、実は、負担が減ることばかりではない。財源が切迫していることから、逆に、負担増を強いられることも多いのだ。
「今、検討されているのはおもに2つ。1つ目は、一定の所得がある75歳以上の方が、病気などに支払う医療費を現状の1割から2割負担に引き上げること。2つ目は紹介状なしで大病院を受診したとき、今は初診料に最低5,000円が上乗せされますが、この上乗せ額を増やし、対象となる病院も増やすこと。医療費はますます上がっていきそうです」
こう話すのは、経済ジャーナリストの荻原博子さん。そこで、医療費を節約できる方法を2択クイズ形式で荻原さんが出題! 正解はどっち?
【Q1】いつもの薬どっちが安い?
病院で処方してもらう or 安売りしているドラッグストア
正解は、病院で処方してもらう。「最近は、病院で処方される薬が、市販薬として販売されるものも増えてきました。『時間がない』『混んだ病院に行きたくない』などの理由で、こうした市販薬を使っている方も多いと思います。ですが、病院で処方される薬は、現役世代だと3割負担。6歳未満と70〜74歳は2割負担で、75歳以上なら1割負担(いずれも現役並みの所得がある方は3割負担)。ドラッグストアで、1割引きで売っていたとしても、特に高齢者は、薬は病院でもらうほうが安くなります」(荻原さん・以下同)
【Q2】胸にしこりを発見! まず、診てもらうのはどっちの病院?
乳がんの権威がいる大病院 or いつもかかっている開業医
正解は、いつもかかっている開業医。「ささいな病気でいきなり大病院に行くと、高い初診料を取られるのをご存じの方も多いと思います。でも、いざ、がんの疑いがあると思ったら、平常心ではいられず、できるだけいい病院で診てほしいと思うのが人情でしょう。ただ、明らかにそうだと思えるのでなければ、『まずはかかりつけ医』が鉄則です。紹介状なしでの大病院受診は、今は最低5,000円上乗せです。でも今後は、数千円の値上げが検討されていて、ますます高くなります。まずはかかりつけ医の診察を受け病院を紹介してもらうほうが、医療費も安くなりますし、素人考えでいきなり大病院に行くより、自分の病状に適したいい病院が見つかるのでは」
【Q3】10日間入院することに。入院費用は15万円だと、どっちの日程が安い?
3月27日〜4月5日の10日間 or 4月1日〜4月10日の10日間
正解は、4月1日〜4月10日の10日間。「医療費が高額になった場合は、『高額療養費制度』が利用できます。年齢や収入に応じて自己負担の上限が決まっていて、申告すると、負担上限を超えた額が返金される仕組みです。一般的な収入の現役世代の方だと、月の自己負担額は9万円ほど。入院費用が15万円なら、約6万円が返金されます。ここで注意したいのが、高額療養費制度は月ごとに計算すること。『4月1日〜4月10日の10日間』の入院期間は4月中なので、入院費が15万円なら、問題なく高額療養費制度を利用できます。6万円の返金を受け、実質負担は9万円です。しかし、『3月27日〜4月5日の10日間』のように月をまたぐと、3月分と4月分に分けて計算。たとえば3月分が8万円、4月分が7万円だとすると、どちらも負担上限の9万円を超えないため、高額療養費制度は利用できません。つまり、『3月27日〜4月5日』の入院費は15万円です。あまり急がない入院などは、月をまたがないように、医師と相談するとよいでしょう」
新型コロナウイルスの流行は収まる気配もなく、先行きの不透明感が強いなかで、「残念ながら今年も給料は上がらないでしょう」と荻原さんは語る。
「私たちは、医療費を含めた小さな節約を重ねて、家計防衛に努めるしかありません。ほかにも、保険など家計のムダをなくす方法を『保険ぎらい「人生最大の資産リスク」対策』(PHP新書)に詳しく書きました。参考にしてください」
「女性自身」2020年3月10日号 掲載