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「財務省が’20年度の『国民負担率』を公表しましたが、過去最高の44.6%となる見通し。これは昨年10月に消費税が10%に引き上げられたことが大きな要因です。国民負担率とは、税金と、年金や健康保険などの社会保険料が所得に占める割合のこと。負担率が上がれば、使えるお金が減ることになります。実は、’12年12月に第2次安倍政権が発足して以降、国民負担率は上がり続けています」

 

そう語るのは「暮らしと経済研究室」主宰の山家悠紀夫さんだ。’12年には39.7%だった国民負担率は、’20年には44.6%に。なんと12%も増えたことになる。

 

負担が増えただけではない。給料そのものが安倍政権のもとで減り続けていると語るのは、京都大学大学院教授の藤井聡さんだ。

 

「物価の上がり幅に、賃金の上昇が追いつきません。物価の影響を考慮した『実質賃金』は年々、下がっているのです。昨年10月の消費税増税のために、実質賃金はより下落します。今年のサラリーマンの実質賃金は、’12年と比べて10%近く減ることになるでしょう」

 

安倍首相がよく実績として誇るのが株高だ。’12年には約1万円だった株価を2万円台に乗せた。株価上昇はアベノミクス効果と安倍首相は胸をはるが、京都大学大学院教授の藤井聡さんはこう見ている。

 

「日本の株式市場そのものが“粉飾決算”のようなものです。年金資金を運用しているGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)は、’14年に国内株式の投資比率を12%から25%に引き上げました。また、日本銀行も政策で国内の株を大量に買っている。上昇した株価はいわば官製相場なのです」

 

両者が国内株式に出資した金額は合計66兆円超で、その割合は東証一部の時価総額の11.2%に上る。仮に、株が暴落した場合、将来の年金資金が目減りしていく可能性もあるのだ。

 

さらに、アベノミクスの柱のひとつだった「女性活躍」も、前進していない。政府は’20年までに指導的地位に占める女性の割合を30%にすると宣言していたが、管理職や国会議員に占める女性割合も遠く及ばない。

 

ほかにも、第2次安倍政権下で本当によくなっているのか、怪しい数字はたくさんある。

 

■雇用

【完全失業率】’12年:4.3% → ’19年:2.4%

【非正規者数】’12年:1,816万人 → ’19年:2,165万人

【うち女性の数(%)】’12年:1,249万人(69%) → ’19年:1,475万人(68%)

 

失業率も下がり「年金の支え手が500万人も増えた」と誇示する安倍首相だが、実際に増加した雇用の7割は不安定で低賃金の非正規雇用。そのうちの多数が女性だ。

 

■企業

【倒産企業数】’12年:1万855(2013の値) → ’19年:8,383

【休廃業・解散企業数】’12年:3万4,800(2013年の値) → ’19年:4万3,348

 

「アベノミクスで減った」と強調する倒産企業数だが、実際は倒産する前に自主的に事業活動を停止した「休廃業・解散企業数」が激増している。

 

■女性活動

【ジェンダーギャップ指数(総合)】’12年:101位/135国中 → ’19年:121位/153国中

【管理職に占める女性比率】’12年:10.6% → ’19年:13.9%(2018年の値)

【女性衆議院議員の数(割合)】’12年:38人(7.9%) → ’19年:47人(10.1%)

【女性参議院議員の数(割合)】’12年:44人(18.2%) → ’19年:56人(22.9%)

 

’20年に女性管理職30%以上とする“国際公約”はまったく達成できず。世界の男女格差を分析して算出したランキング「ジェンダーギャップ指数」では過去最低の121位。とくに政治分野のランキングでは144位に。女性国会議員も衆議院で約1割、参議院でも約2割と低水準なら納得だ。

 

■報道

【世界報道自由度ランキング】’12年:22位 → ’19年:67位

 

首相と大手メディア幹部が会食を繰り返し、報道に干渉しているという話も。

 

■国防

【防衛費】’12年:4兆6,453億円 → ’19年:5兆2,574億円

 

経済政策も頓挫しているなか、防衛費は6年連続で過去最高を記録。

 

※厚生労働省「一般職業紹介状況」、総務省「労働力調査」、厚生労働省「賃金構造基本統計調査 100人以上規模」、東京商工リサーチ「2019年休廃業・解散企業」動向調査、国境なき記者団「世界報道自由度ランキング」などから本誌作成。

 

同志社大学の教授で、政治学者の岡野八代さんが語る。

 

「安倍首相は女性の雇用者を増やしたと誇りますが、実際は収入の落ち込みで、それまで働いていなかった人たちが、不安定で低賃金の非正規やパートで働かざるをえなくなっただけ。首相が語ってきた“女性がいきいきと働く社会”がいまだ実現できていないことは誰の目にも明らかです」

 

安倍政権3,000日ーー。そろそろメッキが剥がれてきたようだ。

 

「女性自身」2020年3月24・31日合併号 掲載

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