【連載】玉置妙憂の心に寄りそう人生相談<第24回>
TBS『グッとラック!』のレギュラーコメンテーターをはじめ、数々のメディアにも紹介され大反響を呼んでいる新書『死にゆく人の心に寄りそう~医療と宗教の間のケア~』(光文社)の著者・玉置妙憂さんが毎週、読者の悩みに寄りそい、言葉を贈ります。
【今回の相談内容】
非常事態宣言を受けて仕事が完全に在宅勤務となった夫がずっと家にいます。結婚してこのかた、平日も休日も、朝から晩まで家で一緒に過ごすということがなかったので、かなり疲弊しています。食事も朝昼晩と三食用意しなくてはならず、メニューを考えるのも億劫で……。いまこの状況なら、定年退職したあとはどうなってしまうのかと途方に暮れています。(女性・48歳・専業主婦)
【回答】
狭い犬小屋に多くの犬を閉じ込めておくと、次々と争いや病が生じるそうですよ。おっと、ワンちゃんの例えなんかで失礼。つまり、最初にお伝えしたいのは、平日も休日も朝から晩まで家で一緒に過ごすことになって、いまのような気分におなりになるのは、生物としてしごくあたりまえのことだということです。心の問題ではなく、物理的な環境の問題です。まずは、そこをしっかりとわかっておきましょう。べつに、お互いの愛が冷めたわけでもなんでもないってことをね。
あとは、その物理的問題の解決策ですね。ふたつほどご提案させてください。
ひとつめ。「定年退職したらどうなってしまうのか…」と途方に暮れていらっしゃるようですが、定年退職後までお二人ともお元気でずっと一緒にお過ごしだと保証書でも出ていますか? まだお若いから、定年はあと20年くらい先のお話かしら。いやいや、20年後は定年が80歳になっているかもしれませんよ。ね、いまと同じ世界が続いているかどうかですら、私たちにはわからないのです。自分勝手に作り上げた未来像に、勝手に途方に暮れるのは、なんだかいろんなものがもったいない気がします。
ふたつめ。これはすぐにでも実行できますよ。食事も朝昼晩三食用意しなくてはならず、メニューを考えるのも億劫なら、一日やめてごらんになったら?「そんなことできるわけがないでしょう」って、怒られそうですけど、本当にできない? なぜ、できないのかしら? できないって思い込んでいるだけじゃない? お相手が0歳児だったらそりゃできませんけれど、旦那さまはおいくつかしら? あなたさまをがんじがらめにして追い詰めているのは、あなたさま自身かもしれないってことに気がついてください。
でもすこし、安心もしています。非常事態宣言のなかで定年後の心配ができているのですもの。あなたさまのメンタルは、ある意味強靱です。非常事態宣言に負けてなんかいません。お互い、しっかりと乗り切りましょうね!
【プロフィール】
玉置妙憂(たまおきみょうゆう)
看護師・看護教員・ケアマネ-ジャー・僧侶。「一般社団法人大慈学苑」代表。著書『死にゆく人の心に寄りそう』(光文社新書)は8万部突破のベストセラー。NHK『クローズアップ現代+』、『あさイチ』に出演して大きな話題に。現在、TBS『グッとラック!』(火曜)のコメンテーターとニッポン放送『テレフォン人生相談』のレギュラーパーソナリティを務める。