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自粛生活が徐々に解除され、「アフター・コロナ」の世界へ向けて。世の中の価値観や働き方が見直されるなか、私たち女性はどう生きるべきかーー今こそ新たな視点を持ち、主体性を持って発言・行動するときです。そこで、コロナの時代を生き抜く女性たちへの提言。

 

■株式会社「サニーサイドアップ」創業者、現「おせっかい協会」会長・高橋恵さん(78)

 

「共働きの主婦の負担が大きいとか、母子家庭の貧困に拍車がかかったとか、今回のコロナ禍で、女性にとっての社会問題が顕著になりました。でも、人は大変だと思うから大変なんです。保育園に預けられないのであれば親を頼るという選択肢もあるし、何かしら方法を見つけるしかない。厳しい言い方をすると、グチを言っているヒマがあったら行動しなさい! ってことですね(笑)」

 

そんな、愛ある喝を入れてくれたのが高橋恵さん。自身も母子家庭で育ち、結婚後は働きながら2人の娘を育てた経験を持つ。東証一部上場した会社の創業者として知られるが、経営から退いた後は、“孫育て”にも精を出したと振り返る。

 

「私が子育てをしていた’70年代は、『子どもを家において働くなんて!』と、とにかく非難されました。でも、女性だって仕事を持って働かなきゃいけない。私は幼いころに戦争で父を亡くし、母が必死に働く姿を見てきましたから。人生、何が起こるかわかりません。夫が病気で働けなくなるかもしれないし、離婚する可能性もある。だから、私は何があっても大丈夫! と覚悟を持てるようにしておくことが必要なんです。私なんか、離婚、再婚、死別、と“人生フルコース”でやってきましたから、今さら何が起こっても、なんてことはないわ(笑)」

 

そんな高橋さんも10年前、心臓に疾患があるとわかったときは、体やお金のことで不安になった。

 

「でも、余生を孫や旅行に使わない、老人ホームにも入らない、と決めて、気が楽になったんです。人が不安になるのはヒマなとき。しかも、その90%は悩むほどのことではありません。たいていの場合、解決策はすでにあるのに、行動するのが億劫なだけです」

 

そして、コロナ禍における人々の行動を見ていて、あらためて考えたことがあるという。

 

「人として本当に大切にすべきことは何か。突き詰めていくと、それはやはり人をおもんぱかる気持ち“おせっかい”だと思います。裏切られることや拒否されることを恐れず、勇気を持って一歩を踏み出すこと。一人の人間が変わることでまわりの人間が変わり、その積み重ねで社会全体が変わっていくはずです」

 

自宅に自社の社員を招いては、ごはんを食べさせたり、結婚相手を紹介したり。自他ともに認める“おせっかいおばさん”のルーツは、子ども時代の出来事にある。

 

「一家で東京に出てきたものの、母の仕事がうまくいかず、食事も満足にできない日々を過ごしました。一家心中寸前まで追い込まれたとき、家の玄関に紙切れが1枚はさまれていたんです。『どうか希望を失わないでください。あなたには3つの太陽がある。今は雲の中に隠れていても、必ず光り輝くときがくるでしょう。どうかそれまで、死ぬことを考えないで生きてください』ーー太陽とは、私たち3姉妹のことでしょう。近所の方が、母の様子がおかしいのを察して書いてくださった。そのひと言で私たちは救われ、強く生きていくことができたのです」

 

コロナの影響で人との接触は自粛されたが、日々、思いついた言葉を色紙にしたため、SNSにアップしている。

 

「この時代、メールはあるし、ズームも使ってみたら便利だし、今の生活に不便は感じません。先日はこんなメールをいただきました。『AIの時代になっても、AIが絶対にできないことはおせっかい。人と人の距離を保っても、心と心の距離はおせっかいでつながっていると思います』。損得を考えないのが大原則。おせっかいを通して人としての成長があり、感じられる幸せがあることを、ぜひ体感してほしいですね」

 

「女性自身」2020年6月23・30日合併号 掲載

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