2018年7月に事実婚を発表し、2019年9月に長男が誕生した、はあちゅうとしみけん。活躍する業界もファン層も違う異色夫婦が、「これ、どうする?」「あれ、どう思ってる?」と赤裸々に語り合う本誌連載「家族会議 議事録」の第42回。
料理は食材のマリアージュを楽しむべきか、映画やドラマは全作品きちんと観るべきか……意見の衝突が止まらない!?
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はあちゅう「今回の議題は、ひどいよ。『ショートケーキのイチゴを最初に食べたら、けんちゃんに怒られた』件(笑)」
しみけん「はいはい(笑)」
はあちゅう「けんちゃんが、けっこう有名なお店のイチゴケーキを買ってきてくれた。私は最初にイチゴを食べた。そしたらけんちゃんが、『いきなりイチゴだけを食べるな!』って怒った。冗談かと思ったらけっこうマジで怒ってて、『なんで?』って聞いたら、『イチゴは甘くなった口の中を、その酸味でバランスを整える役割があって添えられてるんだから!』と……。ねえ、あんなに怒る必要なくない?」
しみけん「甘いのばっかりだと、口の中が甘くなりすぎちゃうから、あえて酸っぱいイチゴを上に載せてあるんだよ。甘い、酸っぱいでマリアージュしていくのに、いきなりイチゴだけ食べちゃったら、ケーキ部分だけが残るでしょ。あれはルール違反よ」
はあちゅう「うーん……」
しみけん「料理というものには、作り手の考えや意味が詰まっている。Aという食材、Bという食材、Cという食材が折り重なってひとつの料理になってる。それを一緒に食べてこその『作品』。Aだけ食べて、Bだけ食べて、Cだけ食べて、って食べ方は違うんじゃないのって話」
はあちゅう「でも、家でケーキ食べてる様子、べつにシェフは見てないじゃん」
しみけん「だとしても。シェフは考えて作ってる。この食材の苦み、こっちの塩味、その横の甘みが渾然一体となって、複雑な味として口の中に収まるから美味しいんであって。その想いを無視して、バラバラに分解したり順番を守らない食べ方には、僕はムッとしちゃうんだ」
はあちゅう「フレンチは、私も全部を合わせて食べるよ。ただ、ソースだけ味見したりはするでしょ」
しみけん「それはわかるけど、はあちゅうの場合、A・B・Cの食材でマリアージュすべきところ、先にCだけがなくなって、AとBが取り残されてたりする」
はあちゅう「自分の中の食べたい順番があるんだもん。けんちゃんは、そういうことないの?」
しみけん「ない。ひとつずつ味見することはあるけど、それはシェフの想いを知りたいから。食材にどうやって火入れしてるのかを確認するために、ある部分だけ食べる。ステーキだったら、まず何もつけずに食べて肉を味わう。そのあと、ソースをつけて食べるよ。最後にどれかだけが皿に残らないよう、バランスを見て食す。はあちゅうは、そうじゃないでしょ」
はあちゅう「私、カレーライスを食べるバランスを見誤って、ルーだけ先になくなって、ご飯が大量に残ってたりもする」
しみけん「うんうん。だからレストランとかで、A・B・Cでマリアージュしてないのに、その店をジャッジしてほしくないんだ」
はあちゅう「べつにジャッジしてないけどな。ていうか、けんちゃん、食べ方に関して細かすぎるよ!」
しみけん「たしかに……。僕、『食ハラ』って言われたことがあるよ。元ボクシング世界チャンピオンの亀田大毅さんに(笑)」
はあちゅう「ほら(笑)」
しみけん「焼き肉屋に行って、『この店のこの肉は、こう焼いたほうがいいですよ』って説明してたら、『しみけんさん、それ『食ハラ』ですよ(笑)』って。『たしかに食ハラだ』って少し反省したけど、やっぱり気になっちゃうんだ」
はあちゅう「全部のお店に対して、そういう態度だったらいいんだけど、けんちゃんは店のランクで明確に差をつけてない? うちの母が作った揚げ餃子は、皮だけ残してたじゃん。びっくりしたよ。『え、シェフへのリスペクトは……?』って(笑)」
しみけん「あれは、皮を食べたら胃もたれしてしまうと思ったから。差別はしてないって。星を獲ってるお店の揚げ物の皮も、残したことあるし」
はあちゅう「じゃあいいけど……」
しみけん「お義母さんの料理はうまい、って毎回言ってるじゃん。それに、残すにしても、作った人の考え方を理解したうえで残してる。理解しないで、イチゴからまず食べてしまうのは罪だよ」
はあちゅう「私、何かにつけバラバラにして食べたいっていう欲求があって、ミルフィーユもパイ皮だけとか、クリームだけで口に入れることあるよ」
しみけん「ギャーだよ(笑)。ミルフィーユ作るの難しいんだぞ!」
はあちゅう「いろんな食べ方で味わいたいんだよ」
しみけん「しかし聞けば聞くほど、前回話した映画の見方の違いに近いなあ。はあちゅうは映画を観るときに、音だけ分離して聞くのでも、かまわないんだよね。料理と一緒でマリアージュしなくてもかまわない」
はあちゅう「子供の世話や家事で忙しくて、座って観る時間がないのもあるよ。観る時間はないけど、友達と映画の話がしたい、コンテンツを知りたいときは、その方法しかない。そりゃあ、できれば映画館でちゃんと観たいし、集中したいよ。私、映画は続編ものが1、2、3、4……と続いてたら、ちゃんと1から順番に観たいし」
しみけん「僕はそれ、1からじゃなくてもかまわない派。きっちりアタマから観ようとすると、モチベーションが持たないことがあるから。いきなり『3』から入って興味持って『1』に戻るのは、入り方としてはハードルが下がるぶん、アリかなぁと」
はあちゅう「つくづく私と違うね」
しみけん「中3のときに読んだ『あしたのジョー』がそうだった。2巻だけ100円で買ったら、力石がブタの大群の合間をぬってジョーを倒すシーンがあって、『1巻を読みたい!』ってなってドハマりした」
はあちゅう「けんちゃん、『バットマン』シリーズを観ないで『ジョーカー』だけ観てたもんね……」
【はあちゅう】
1986年、神奈川県生まれ 慶應大学在学中より、ブロガー活動を開始。2014年フリーに。近著に『わくわくする未来をつくるためのお守り言葉』『子供がずっと欲しかった』がある
【しみけん】
1979年、千葉県生まれ 1998年にデビューし、出演本数は約1万本の現役AV男優。最新刊に『AV男優しみけん仕事論0.01 極薄!』(扶桑社)がある
取材&構成・稲田豊史
(週刊FLASH 2020年7月14日号)