東京都や大阪府では多くの感染者が再び出始めている。現場では、慢性的な人手・医療装備品の不足、ギスギスした人間関係に悩みを抱える医療従事者の姿がーー!
「コロナ禍はひどかった4月、5月の記憶が本当に曖昧なんです。忘れたいし、二度と戻りたくないというのが正直な気持ちです」
関西地区の大学病院の感染症部門でICUと救急外来を受け持ち、コロナ治療の最前線にいる看護師のAさん(26)。6月末のこの日も、つい数時間前まで“コロナ病棟”で残業をこなしていたといい、声には疲れが色濃くにじんでいた。
7月10日に東京都で過去最多となる243人の感染者が出て、大阪府も9日時点で4月以来となる31人を記録。都では、30代以下の感染者が実に8割近くを占めると報じられた。PCRセンターにも勤務する感染症専門医で、のぞみクリニックの筋野恵介院長は言う。
「若い人は感染しても重症化することが少ないです。私が担当するPCRセンターでも、『スタバの帰りに寄った』など気軽な感じの人も多い。そんな軽症で活動的な若者が無自覚のうちに、感染をジワジワと広げてしまっている可能性は大いにあります」
関西の特定機能病院に勤務する30代のママさんドクターのBさんはここにきて、コロナ病棟と一般病棟の間で、思いもしなかった軋轢があると打ち明ける。
「コロナ治療に関する危険手当は、うちの病院では1日2,000円。家族と接しないためにホテル住まいする先生方もいるのを思うと、ビミョーな金額でしょう。コロナでは、陰性になるまで入院が続いたりします。すると患者さんは、入院はしていても、見た目は普通に元気で、医師は体温や血圧を測るだけという作業になる。一方、通常の病棟では、相変わらず目まぐるしい日々がある。そこで、『こっちのほうがメチャ忙しいのに、コロナユニットだけ手当をもらってズルい』という、不公平感を口にするスタッフもいて、病院内の一部に険悪な雰囲気があります」
さらに日常生活でも、理不尽な思いをさせられる場面もーー。
「職業差別とまではいきませんが、子どもの保育園の保育士さんからは『コロナの患者さんも診てはるんですか?』と、何度も聞かれます。ああ、嫌がられているんだろうなとは、感じますね。うちは夫も医療従事者ですが、ここ4カ月ほどは別居で、夫は別に借りているアパートから通勤しています。コロナ以降、家族の団らんはゼロですね。そんななか、先日も2人の患者さんが退院しました。心配されていたエクモ(人工肺)までいかず、人工呼吸器の段階で回復したときは、本当にホッとしました」
前出のAさんも、次のように語る。
「そんなに仲のよくないコから急に連絡が来て、『いつ第2波来るん?』など冷やかしみたいに質問されたり。コロナ以降は、自然に自分から看護師であることを言わなくなりましたね。同僚の看護師が保育園に子どもを迎えに行ったら、自分の子だけマスクを付けさせられていたと、嘆いていたことも」
コロナ医療の現場も、いったんは落ち着いたかのように伝えられていたが、実は今もなお医療崩壊寸前の過酷な状況が続いていた。Aさんはこう続ける。
「昨日も、2名運ばれてきましたから、現在は6名のコロナの患者さんが入院されています。ベッド数はICUと専用病棟を合わせて約70床ですが、医師は救命部門でたった8名ほどで、ずっと足りない状態です。私たち看護師は20名くらいですが、逆に人数は減ってますね。というのも、新人さんなど、コロナのピークがひと息ついた6月ごろから、忙しかったころの後遺症といいますか、ストレスなどで体調を崩して休むことが多くて。日勤も、今いる人数ギリギリで回している状況は変わりません」
コロナ医療最前線の悲鳴に、国や自治体はどう動くのだろうか。
「女性自身」2020年7月28日・8月4日合併号 掲載