東京都や大阪府では多くの感染者が再び出始めている。現場では、慢性的な人手・医療装備品の不足、ギスギスした人間関係に悩みを抱える医療従事者の姿がーー!
7月10日に東京都で過去最多となる243人の感染者が出て、大阪府も9日時点で4月以来となる31人を記録。都では、30代以下の感染者が実に8割近くを占めると報じられた。PCRセンターにも勤務する感染症専門医で、のぞみクリニックの筋野恵介院長は言う。
「若い人は感染しても重症化することが少ないです。私が担当するPCRセンターでも、『スタバの帰りに寄った』など気軽な感じの人も多い。そんな軽症で活動的な若者が無自覚のうちに、感染をジワジワと広げてしまっている可能性は大いにあります」
コロナ医療の現場も、いったんは落ち着いたかのように伝えられていたが、実は今もなお医療崩壊寸前の過酷な状況が続いていた。関西地区の大学病院の感染症部門でICUと救急外来を受け持ち、コロナ治療の最前線にいる看護師のAさん(26)は、次のように語る。
「昨日も、2名運ばれてきましたから、現在は6名のコロナの患者さんが入院されています。ベッド数はICUと専用病棟を合わせて約70床ですが、医師は救命部門でたった8名ほどで、ずっと足りない状態です。私たち看護師は20名くらいですが、逆に人数は減ってますね。というのも、新人さんなど、コロナのピークがひと息ついた6月ごろから、忙しかったころの後遺症といいますか、ストレスなどで体調を崩して休むことが多くて。日勤も、今いる人数ギリギリで回している状況は変わりません」
関西の特定機能病院に勤務する30代のママさんドクターのBさんは、病院の抱えるジレンマを明かす。
「私は別の私立の病院でも働いています。今、患者さんの間に『病院に行くとコロナがうつるから』と、通院を避ける傾向があり、その損失額は億単位だと。小規模の個人病院にとっては、そのまま倒産につながります。国には、コロナ診療を求めるならば、財政支援をお願いしたいと思います」
同様に、メインで勤務する大学付属病院でも……。
「コロナ診療に集中する陰で、普通の大病やがんなどの患者さんの入院や手術が後回しだったり、自粛されている現状があります。当然、外来の枠自体も減らしているわけです。コロナが少し落ち着いたから、すぐに入院手術ともいきません。やはり、その患者さんもPCR検査で陰性とわかってからでないと入院もできませんし、術前検査も必須ですから。外科系の医師のなかには、こう憤るベテランの先生もいらっしゃいます」
《コロナの患者を3カ月間受け入れるために、通常患者の手術を150件も後回しにしているではないか。同じ命なのに》
「すでに、いろんなかたちで医療崩壊は始まっているのだと痛感しています」
現場で奮闘を続ける女性2人は最後には同じ不安を訴えた。
「ワクチンや特効薬ができないまま第2波が来たら、まずはマスクやガウンなどがすぐに底を突き、医師や看護師不足も深刻化して、私たち現場は即お手上げです」
前出の筋野院長が言う。
「今のところは、高齢者や持病のある人たちにまで感染は広がっていませんが、こうした層にまで拡大すれば、日本中で医療崩壊が起きるリスクは十分あります」
もう猶予は一刻もない。コロナ医療最前線の悲鳴に、国や自治体はどう動くのだろうか。
「女性自身」2020年7月28日・8月4日合併号 掲載