新型コロナウイルスの感染拡大によって、GDP下落率は戦後最悪の数値を記録した。はたして、この事態がわれわれの家計にどんな影響を与えるのだろうかーー。
「今年度の4〜6月期のGDPの下落率は、リーマンショック時(’09年1〜3月期)を超え、年率換算で27.8%と発表されました。戦後最悪の数値です。人為的に経済活動を止める『緊急事態宣言』下にあったため、専門家の間では予想されていましたが、ショッキングな結果です。長期的に見るとGDPと賃金はリンクするもの。今後の年収にも関わってくる問題といえます」
このように警鐘を鳴らすのは、経済評論家の加谷珪一さんだ。私たちの賃金にどれくらいの影響があるのか、試算してもらった。
「リーマンショックは’08年9月のリーマン・ブラザーズの破綻に始まりました。国税庁の民間給与実態統計調査によると、’08年の給与所得者の平均年収は429万6,000円でしたが、’09年には405万9,000円に急落。1年で5.5%、約24万円も下がっています。リーマンショック時のGDP下落率(17.8%、年率換算)から今回の下落率(27.8%)で単純計算すると、給与は8.6%落ち込むと予想されます。今の平均年収は440万7,000円ですから、402万8,000円まで落ち込む計算です」
年間約38万円の収入ダウンなら、1カ月分の給料がまるまるなくなってしまうようなイメージだ。年収が下がった状態で、コロナ収束まで持ちこたえる体力が私たちの家計にあるのだろうか。
「通常、景気が悪くなればモノの値段も下がります。しかし、コロナ不況では、モノの値段が上がる恐れがある。これまで私たちは、あらゆる国から原材料や部品を安く調達することで、低価格の商品や食品を入手できていました。しかし感染拡大によって、世界の物流のあり方が変わってきます。原材料や部品の調達が近隣国や国内に限られればコストが上がり、価格上昇につながります。すでに物流の混乱からネットショッピングでも値上げ傾向に」
企業も生き残りをかけて、来年度予算を検討する秋ごろから、本格的なコストカットに乗り出す。
「昇給、昇進の停止、役職手当の廃止、再雇用後の年収引き下げといった、生涯賃金の抑制にも着手するでしょう」
当然、冬のボーナスへの影響も大きいはずだ。経済評論家の平野和之さんは、次のように話す。
「経団連の発表によると、夏のボーナスの各業種の総平均は、前年比マイナス2.17%と小幅な落ち込みでした。それに安心している人もいますが、これは3月末までの決算に対して決められた額なので、本格的なコロナの影響が出るのは冬のボーナスです。夏以上の3〜5%のダウンが目安で、業種やコロナの感染状況によって、半減する企業もあると考えます」(平野さん)
賃下げだけでなく、リストラも急増すると予想される。
「現在、経済が止まっているため、仕事がなく、休業状態にある社員がいます。体力のある企業は最低限の給与を支払うことができていますが、いつまでも続きません。こうした休業状態にある人は400万人もいると見られています。仮に半数が職を失えば、失業者は200万人となります」(加谷さん)
リーマンショックによる失業者は約100万人といわれているから、倍の失業者が生まれることに。最悪のケースに陥らないよう、政府はGo Toキャンペーンなどを打ち出しているが……。
「否定しませんが、タイミングがいいとは思えません。ワクチン開発、感染対策への投資などを第一に考えるべきではないでしょうか。個人としては、日々の節約で現金を手元に残しておくこと、1〜2年は大きな買い物をしないなど、対策しましょう」(加谷さん)
「女性自身」2020年9月8日 掲載