米ミシガン州デトロイト・ラピアにある老人ホーム「Villages of Lapeer Nursing & Rehabilitation」で、47人の入居者と16人の従業員が新型コロナウイルスに感染し、そのうち19人が死亡した。4月に68歳の母を失ったデニス・ウィリアムズさんとその家族は、ホームの経営陣を相手取り訴訟を起こしている。USA TODAYによると、このホームでは従業員にマスクの着用を禁止していたというのだ。
「施設のスタッフは、マスク、手袋、個人防護具を着けていませんでした。腹立たしいのは、これがスタッフの落ち度ではなかったということなのです。彼らはそういったものを着けてはいけないと、命令されていました」とウィリアムズさんは同紙に語る。
どうやら「マスク禁止」は施設の上層部の意向だったようだ。
ある元従業員は「患者が怖がるでしょう!」と看護部長にマスクを剥ぎ取られたと証言している。ミシガン州保健福祉局のデータによると、現在までにラピアで新型コロナウイルスのために亡くなった人は34人。当該施設での死者はその半数以上を占めている。
施設で働いていた看護助手のテイラー・ミニフィールドさんは、自身の母親を入所させていた。「母はがんを患っていたため、そばにいるためには必ずマスクをしなければならなかったのに、私の上司はマスクを剥ぎ取り、ゴミ箱に捨てたんです」と振り返る。
ミニフィールドさんは、寄付されたN95マスクが看護部長のオフィスに運び込まれるのを目撃していたという。
「彼女はそれを抱え込み、オフィスから持ち出すことはありませんでした。廊下で、寄付があったマスクを使ってもいいかと聞いたのですが、『あれは緊急時のためのものだから今はダメ』と言われました。彼女にとって何が緊急事態なのか今でも謎です。だって、あの時こそ緊急時だったのですから。」
また、新型コロナウイルス感染症の症状が明らかに出ている患者がいたにも関わらず、上層部は検査を渋った。結果、ミニフィールドさんと同僚のターシャ・ヘイデンさんは感染。しかし、上司に休まず働くよう強制され症状が悪化、ヘイデンさんは現在も肺機能が77%しか戻っていないという。
ウィリアムズさんの母親が亡くなった翌日、州の当局が施設の調査を開始。37ページに及ぶ報告書では、管理者がスタッフに個人防護具の着用を禁止していたことが記録され、危険度は「緊急」と判断された。
ミニフィールドさんとヘイデンさんもホームに対し損害賠償を求めて訴訟を起こしたが、ホームを経営するトーマス・デイヴィス氏はテレビニュースの取材に対し「我々の対応に落ち度はありませんでした。できる限りのことをしていたのです。信じて下さい」とコメントし、争う姿勢を見せている。