【東京】名護市辺野古の新基地建設工事が続く大浦湾で、今年2月にジュゴンのものとみられる鳴き声が確認された件で、防衛省は19日、鳴き声とみられる音声データを、工事による生態系への影響を調べる環境監視等委員会に、提出していなかったことを明らかにした。また昨年度実施の工事によるジュゴンの生態への影響について、委員会への報告書の内容と、防衛省がこれまで行ってきた説明との間で食い違いがあることも判明した。
同日の衆議院安全保障委員会で、岸信夫防衛相らが赤嶺政賢衆院議員の質問に答えた。
赤嶺氏によると、録音データは、沖縄等米軍基地問題議員懇談会(会長・近藤昭一衆院議員)でも、専門家らから提供を求める要望が出されていたが、防衛省は応じていないという。
赤嶺氏は「大事なことはまず事実を特定することだ」として、再度データの提出を求めた。これに対して岸氏は、環境調査を委託し鳴音を録音した業者との契約で、「録音データの提出を受けることになっておらず、沖縄防衛局が保管するものではないため、録音データを提出することは考えていない」と述べ、求めに応じない姿勢を示した。
赤嶺氏はこれに対し、業者との契約関係書類で「(防衛省が)成果物の提出を求めた場合、受注者はその指示に従うと明記されている」と指摘し、「環境に配慮していることを行動で示してほしい」と改めて対応を求めた。
また、防衛省はこれまで、ジュゴンの姿が確認されなくなったことと、工事との因果関係を「考えられない」と説明してきたが、環境監視等委員会への報告書では「考えにくい」と表現を改めていた。赤嶺氏はこの点についてもただしたが、防衛省の担当者が「事実と評価考察を書き分ける観点から修正を行った」と説明。岸氏は「環境監視等委員会の指導、助言をいただきながら適切に対処する」と述べるにとどめた。