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都道府県の「貯金」である財政調整基金が危機的な状況を迎えている。コロナ対応のために大きく取り崩されているのだ。将来、私たちの生活にも影響が出る可能性がーー。

 

「都道府県が貯金として積み立ててきた財政調整基金が、新型コロナウイルス対応に使われ大幅に目減りしています。災害や不況など税収減の場合に財政調整基金が取り崩されますが、第3波が来ているコロナ対応のために歳出は今後も増加する一方、税収の落ち込みが確実。地方財政は大きな危機を迎えています」

 

そう語るのは、地方財政に詳しい一橋大学大学院の佐藤主光教授。本誌は地方自治体に緊急アンケートを実施。10月末時点の財政調整基金の残高を調べてみたところ、都道府県すべての“貯金”は4,592憶円。’19年度末(1兆9,370億円)から4分の1以下に落ち込んでいることがわかった。

 

「自治体の貯金が大きく減ったとしても、国から支援として補助金や交付金があるため、すぐに学校や病院が閉鎖されたり、行政サービスが低下したりすることはありません。しかし、地方圏の自治体は少子高齢化で働き手が減り、税収も落ち込んで財政的に厳しい。そこにコロナ対応という負担がのしかかった。国も財政的に厳しくなり支援が滞ってしまえば、福祉や教育などの財源にも影響が出る。突発的な災害があっても対応できないことも考えられます」(佐藤教授)

 

 

財政調整基金ワースト1位は、貯金残高がゼロの熊本県。県の担当者は語る。

 

「今年7月の豪雨災害への対応で、財政調整基金を含めた財政調整用の熊本県の基金(貯金)残高はゼロに。感染拡大がおさまらないコロナ対策を拡充したいが……国の強力な支援が欲しいです」

 

2位となった京都府の財政調整基金の残高は、’19年度末と変わらず2,000万円。ほとんど底をついた状態だった。

 

「府の方針として貯金として財政調整基金を貯めこむことよりも、その分、早急に府民サービスに対応してきました。医療提供体制の整備や休業要請を受け入れた中小企業支援などのコロナ対応には一般財源や地方創生臨時交付金を充てています」(京都府担当者)

 

 

なかには財政調整基金をほとんど取り崩していない県もある。17位の岐阜県は、県庁舎を建て替える目的で貯めていた特定目的基金を使い、コロナ対策の費用をひねり出している。

 

20位の千葉県と21位の埼玉県も“貯金”には手を付けずに、特別会計から100億円借り入れ、コロナ対策を実施しているが……。

 

「財政調整基金を取り崩さなかったといっても安心はできません。千葉県も埼玉県も原資は特別会計からの取り崩し。いずれ“返済”する必要があります。どちらの県も交付団体、つまり国から地方交付税が入りますが、東京都市圏のため、ほかの地方圏の自治体に比べると額は圧倒的に少ない。今後、その借金が重くのしかかってくるのです」(佐藤教授・以下同)

 

残高が多いからといって安心ではない。13日には4日連続で200人超の新規感染者が出た44位の大阪府はどうだろう。

 

「すでに半分以上も財政調整基金を取り崩している大阪府は、大都市のため企業も多く、法人税の税収減が確実な状況。そのうえ、雇用を守るため休業協力金を支給し、感染者数の多い都市部では医療提供体制を整えるための歳出が増加。コロナ禍が長引けば長引くほど、財政事情は厳しくなり、財政調整基金がいつ底をついてもおかしくはありません」

 

では、財政調整基金の蓄えがもっともある東京都(47位)は安心してもいいのだろうか?

 

「財政調整基金からのコロナ対策の取崩しはワースト1位。東京都は国からの交付金が入らない不交付団体。国から財政支援がない分、自前でコロナ対策をする必要があります。経済が回復すれば、目減りした分の財政調整基金を取り戻すことはたやすいが、コロナの影響が長く続けば、豊かな東京だとしても財政的には厳しくなるでしょう」

 

都道府県を火の車にした新型コロナウイルス。私たちの生活に密着しているだけに、国のバックアップ態勢が必要だ。

 

「女性自身」2020年12月1日・8日合併号 掲載

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