「PCR検査が受けられない」。新型コロナウイルス感染拡大の第1波と第2波ではそんな訴えが相次いだ。現在ははたして改善されているのだろうか。本誌記者が経験した“お金次第”の最新PCR事情ーー。
「万が一、無症状でコロナ感染していた場合、不特定の方にうつしてしまうのが怖かった。出張先で『東京から来た人だ』と不安にさせてはいけないと思ったんです」
11月上旬、本誌50代女性記者が東北地方への出張前にPCR検査を自費で受けた経緯を振り返る。
東京の自宅の最寄り駅で検査できるとネットで知り、出張日の2日前に予約を入れた。費用は「陰性証明書」発行料込みで3万円。院内では医師も看護師も防護服、検温で平熱「36.3度」を確認し、別棟「発熱外来」に移動して、検査キットに唾液を絞り出して採取。
さらに次の日の午後、電話で「検査の結果『陰性』でした」と告げられ「ホッ」。その夜に、病院に行き「陰性証明書」を受け取った。翌日からの出張の準備をしていると、北陸地方の実家近くに住む姉から電話が。
「姉は『母が38度の高熱が2日続いている』というんです。85歳の母は高齢に加え糖尿病の基礎疾患があり、『コロナ感染すると重篤化する』恐れがありました」
市のコロナに関するコールセンターに連絡するよう姉に伝え、2日後に大学病院でPCR検査を受けることが決まった。母は「コロナと疑わしい症状(発熱)があって医師が必要と判断した」ため、費用は公費負担だった。
母と頻繁に接触していた姉も家庭があったので、検査を受けたがった。だが、特に症状はなく、母の結果も出ていないので濃厚接触者でもない姉は、公費での検査を受けることができない。
「姉はネットで郵送のPCR検査を申し込みました。すぐに検査キットが届き、唾液を入れて速達で送ったそうです。結局、姉も母もほぼ同じタイミングで『陰性』と判明。今回の件で、コロナをより身近に感じるようになりました。そして、何よりPCRを受ける方法がこんなにたくさんあるんだと驚きましたね」
新著に『日本のコロナ対策はなぜ迷走するのか』(毎日新聞出版)がある医療ガバナンス研究所理事長・上昌広さんはこう話す。
「日本では無症状感染者へのPCR検査はほとんど行われていない。アメリカ海兵隊の新兵の検査で陽性者の約9割が無症状者とわかり、イギリスでは全国民に複数回の検査を実施するというのに……」
上さんは「少しでも『体調が悪い』と思ったり、『鼻水が出た』程度でも医療機関や保健所に連絡すべきです」と力説する。
「特に『かかりつけ医』に連絡した場合、PCR検査をそこで実施していないとしても、患者さんは大事なリピーターですから親身に調べてくれるはず。内々で検査してくれる可能性もあります」
ただ、無症状で「陰性」を確認したいなどの場合は、自己負担になってしまう。費用の相場や方法を確認しよう。
「PCR検査は、主に鼻咽頭ぬぐい液と唾液を調べる方法がありますが、適切に行えば精度に違いはありません」
「女性自身」2020年12月15日号 掲載