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1月14日「給与ファクタリング」の業者が、警視庁に摘発された。のべ10万人に約50億円を貸付け、13億円以上もの利益を得たという。コロナ禍で困窮する人が悪徳業者の罠にはまらないよう、経済ジャーナリストの荻原博子さんがその仕組みを解説してくれたーー。

 

■年間で法定利率の12倍もの高利に

 

給与ファクタリングとは、たとえば20万円の給料を受け取る権利(債権)を、手数料20%(4万円)を払ってファクタリング業者に売却します。利用者は前借りのような形で、手数料を除いた16万円を手にし、その後、給料が出た日に額面どおり20万円を払って、債権を買い戻すというものです。

 

商取引では、入金待ちの売掛債権を業者に買い取ってもらう「ファクタリング」が認められています。これを個人に転用したのが給与ファクタリングで、当初「債権の買い取りだから貸金業ではない」と業者は主張していました。

 

しかし、’20年3月に金融庁が「給与ファクタリングは貸金業にあたる」との見解を発表。業者は貸金業の登録が必要ですが、摘発された業者は登録していません。

 

また、法定利率は最大でも20%ですが、摘発業者はその30倍もの金利を受け取っていたとみられ、出資法にも違反しています。

 

改めて先ほどの例を見ると、20万円の給与債権の手数料は4万円で20%。これは1カ月間の利率、月利です。年利に換算すると240%で、法定利率の12倍もの高利です。

 

しかも借金として考えると、16万円借りるために利息が4万円ですから、月利が25%。月利でさえ、法定利率を超えています。借金は、年利率を確認しましょう。

 

給与ファクタリングは「ブラックOK」をうたい、多重債務者やブラックリストに載っている方が手を出すケースが多く見られます。

 

最近は「即日換金OK」との広告を見て、コロナ禍で給料削減やボーナスカットのため、住宅ローンの返済に困った方が、利用することが多いようです。

 

給与ファクタリング業者は、結局のところ“ヤミ金”です。「今月だけ」と思っても、泥沼にはまると、なかなか抜け出せません。絶対、手を出してはいけません。

 

もし住宅ローンの返済に困ったら、すぐ銀行に相談してください。いまは同じように困った方がたくさん相談していますし、銀行も丁寧に対応してくれます。ボーナス払いをやめる、返済額を抑えるなど、さまざまな方法があります。

 

また、ほかの理由で困窮する方は自治体の相談窓口や消費者センターなどでも相談可能。法テラスでも無料で相談できます。

 

最終的には「自己破産」も、「生活保護」という支援もあります。安倍前首相が昨年6月に「生活保護は国民の権利」と言ったとおり、困ったときは活用しましょう。

 

国や警察には、こうした違法なヤミ金業者をどんどん摘発していただきたい。困窮者に付け込むヤミ金業者が、1日も早く根絶されることを望みます。

 

「女性自身」2021年2月9日号 掲載

経済ジャーナリスト

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