がんは治療への不安もさることながら、心配なのはお金。実は自治体などからの支援制度は、かなり充実しているのだ。日本人の2人に1人ががんになる時代、損しないために正しい知識を持って申請を忘れずにーー!
「がんを告知されたとき、これからどんなに大変な治療が待っているのか不安になりますが、その次に治療費をどう工面しようかといったお金の悩みも押し寄せてきます。ですが、実はがんになるともらえる、戻ってくるお金があるのです」
こう話すのは10年前に乳がんを告知され、手術を経てその後寛解、『がんを生きぬくお金と仕事の相談室』(河出書房新社)の著書がある辻本由香さんだ。
「私ががんで治療を受けたとき、知り合ったがん患者さんは、治療費を工面するためパートに出たり、仕事を辞めざるをえなかったりとお金のことで四苦八苦している方があまりに多かった。いろいろな自治体や健康保険組合などからの支援があることが、全然知られていなかったのです」
制度を知らず、金銭的な理由で治療を諦める人も目の当たりにしたという辻本さんは、必要な情報を届けられないかと考え、闘病が一段落したとき、ファイナンシャルプランナーとして開業を決意。がんに罹患した人の、その後のライフプランの相談・設計を専門としている。
「治療が長引くとお金の悩みが深くなります。そんなとき、制度を知っていると、心配事が軽減できます。こうしたお金は、自分から請求の手続きをしないともらえません。日本人の2人に1人ががんになる時代。ぜひ情報を知っておいてほしいと思います」
そこで、辻本さんにがんになったら知っておくべき制度のなかから「小児・AYA世代のがん患者等の妊孕性温存療法研究促進事業」「医療用ウィッグや乳房補整下着などの助成」を解説してもらった。
■小児・AYA世代のがん患者等の妊孕性温存療法研究促進事業
〈請求先〉各都道府県庁
AYA世代には、15〜39歳のがん患者があてはまる。
「がんの治療には、少なからず不妊のリスクがあります。卵子凍結など、妊娠する機能を残す医療は、がん治療の途中や、終えてからでは、できないこともあります。後悔しないようこんな制度もあることを覚えておきましょう。凍結費用は費用もかかり、がんの治療にもお金がかかるため、妊娠を諦める人も多いので、この制度ができたのは画期的ですね」(辻本さん・以下同)
主治医はどうしてもがん治療優先に考えるので、「私もこの制度を利用したい!」と、患者さんが声を上げることも意義があると、辻本さんは言う。
■医療用ウィッグや乳房補整下着などの助成
〈請求先〉各都道府県庁
「ニーズの高まりから近年始まった制度です。乳がんの術後はふだんの下着ではなく、肌にやさしい素材のものや検査に適した前開きのデザインのものが便利ですが、費用がかかります。ウィッグも精巧で人にわからないものは値段もそれなりにします。どちらも健康保険外で買い求めるため、負担がかかり、諦める人も多かったのです。自治体によって金額も異なり、そもそも補助があったりなかったりですので、各自治体の窓口に問い合わせてみてください。今後、ぜひ広がってほしい制度です」
がん治療でつらいときもあると思うが、合間に手続きをして、お金の悩みから解放されよう。
「女性自身」2021年4月27日号 掲載