住んでいた場所は違っても、年齢が近ければ「そうそう! わかる」って盛り上がれるのが、青春時代、みんなで回し読みした漫画の話。活躍する同世代の女性と一緒に、“あのころ”を振り返ってみましょうーー。
「’80年代に小・中・高校生だった世代は、『なかよし』(講談社)や『りぼん』『マーガレット』(ともに集英社)、そして『花とゆめ』(白泉社)といった漫画雑誌を読み比べ、同級生と“私は○○派”などと語り合った経験があるでしょう。『花とゆめ』は少し大人な漫画が掲載されているのが特徴でした」
そう話すのは、世代・トレンド評論家の牛窪恵さん(53)。’80年代、ギャグからファンタジーまで幅広いジャンルの作品が掲載されていた同誌をけん引し、かつ異彩を放っていた漫画が『パタリロ!』(’78年〜)だ。
近年では、かつての『翔んで埼玉』が時を経て大ヒットした魔夜峰央さんが、デビュー後、なかなかヒット作に恵まれないころに“シリアスだけど、ギャグ要素のある作品を描いてみよう”と筆を執り、生まれた作品といわれている。
マリネラ王国の国王・パタリロが、美少年好きのイギリスの諜報部員・バンコランを振り回しながら、さまざまな騒動を解決していくというのが定番の展開だ。
「ギャグの面白さはもちろん、扱うジャンルが非常に多岐にわたっていて、’70年代後半から’80年代にかけてブームとなったオカルトやホラーの要素を盛り込んだり、ハードボイルドなアクションを取り入れたりしていました。女のコが興味津々の、宝石類に関する詳しい知識なども描かれていたので、しっかり読み込もうとするのですが、次の場面でパタリロがギャグに切り替えてしまう。バンコランと一緒に読者も、いい意味で振り回されたものです」
現在ではひとつのジャンルとして確立されている「BL(ボーイズラブ)」も描かれている。
「露骨な描写がされているわけではないのですが、パタリロが男のコのベッドに潜り込んだりするシーンを見て、当時の女子はドキドキしたものです」
アニメ化(’82〜’83年・フジテレビ系)された後、連載の場を『別冊花とゆめ』『マンガPark』などに移しながら、現在も続き、コミックスは102巻を数える。
「’16年には初めて舞台でも上演され、おしゃれで、好奇心旺盛で、次に何をしでかすかわからないパタリロを、加藤諒さんが好演しました。40年以上の長期連載となったことで、親子2世代で楽しむファンも多くなりました。いたずら好きでも『卑怯者』ではないパタリロの描写は、親が子どもと読んでも、安心して一緒に大笑いできるのが魅力ではないでしょうか」