沖縄戦で命を落とした20万人余をしのび、恒久平和を願う「沖縄全戦没者追悼式」(県、県議会主催)が23日、沖縄戦末期の激戦地となった糸満市摩文仁の平和祈念公園で執り行われた。参加者は正午の時報とともに黙とうをささげた。玉城デニー知事は平和宣言で「戦争を体験したすべての方々の思いに応え、二度と悲劇を繰り返さないため、戦争体験や教訓を次の世代に正しく伝えていく」と誓った。昨年に続きコロナ禍の追悼式となり、招かれた参加者は前回の161人よりさらに絞られて30人となった。
県内各地でも慰霊祭が行われ、戦後76年たっても戦禍を忘れず、平和への願いを紡いでいく気持ちを強めた。
玉城知事は平和宣言で、来年に控えた本土復帰50年の節目を前にしても、県内に米軍基地が集中し米軍機騒音や環境問題、米軍関係の事件・事故が後を絶たないと指摘。日米両政府に対し、米軍普天間飛行場の名護市辺野古への移設にこだわらないよう求め、「目に見える形で沖縄の過重な基地負担の解消を図っていただくことを要望します」と述べた。
新型コロナウイルスの感染拡大により、県は菅義偉首相ら政府要人の招待を見送った。菅首相はビデオメッセージで「沖縄の基地負担軽減に向け、一つ一つ、確実に結果を出していく決意であります」と述べ、移設問題には言及しなかった。
県遺族連合会の宮城篤正会長はコロナ禍の影響で「遺族会からは私ひとりの出席となり断腸の思い」とし、「今後二度と『戦没者遺族を出さない』という強い信念をもって活動を続ける」と決意を述べた。
宮古島市立西辺中学校2年の上原美春さんが平和の詩「みるく世(ゆ)の謳(うた)」を朗読し、「平和な世界は私たちがつくるのだ」と気持ちを込めた。
国内外の戦没者24万1632人の名が刻まれた「平和の礎(いしじ)」の前には早朝から多くの家族連れが訪れた。雨にぬれた故人の名をなでながら、平和が続くことを強く願った。