「水分補給をしようにも、近くにあった自動販売機のドリンクはすべて売り切れ。会場到着から1時間ほど並んでワクチンを打ちましたが、その後なんだか頭がボーっとしてフラフラ。副反応なのか熱中症の症状だったのか、よくわかりません」(40代男性)
全国各地で進められている新型コロナウイルスのワクチン接種。7月21日時点で約4,500万人が1回目の接種を終えている。
この炎天下に急ピッチで進められているが、接種会場のなかにはテントやプレハブで作られた急ごしらえの場所も少なくない。冒頭の声は、東京・代々木公園のワクチン接種センターから出てきた人の感想だ。
希望者へのワクチン接種が順調に進むことが望まれるいっぽう、気がかりなのが連日の体温並みの酷暑が原因の熱中症による救急搬送。全国医師ユニオンの植山直人医師は次のように語る。
「ワクチン接種会場ではエアコンを強くしたり、水分補給を呼びかけるなど熱中症の対策にも力を入れています。ところが会場によっては、代々木公園のように駅からも相当歩いていかなければならない場所であったり、温度調整が不十分で熱のこもった会場もあるのが実情です。そのような環境に長時間いることは体に大きな負担をかけることになります。これから暑さがますます本格化するなか、全国のワクチン接種会場やそこまでの往復で、熱中症になる患者が続出する危険性があるのです」
さらに植山先生が危惧しているのは、熱中症患者の急増に伴う医療崩壊だ。
総務省消防庁の調べでは、今年7月12〜18日の熱中症による救急搬送人員(速報値)はすでに4,510人。昨年の同時期が1,393人であるから、比較するとなんと約3.2倍になっているという。
「熱中症患者の対応に追われる夏は、病院はたいへん忙しくなります。それでなくても1年半に及ぶコロナ禍で医療現場は疲弊しきっています。そのうえ、東京五輪開催のために医療スタッフが派遣されて人員に余裕がない病院もあるのです。こうした状況下で、ワクチン接種の会場で熱中症患者が続出するような事態になれば、医療崩壊を引き起こす一因となってもおかしくはありません」
熱中症の初期症状は発熱やだるさなどで、コロナの症状と似ている。感染予防の面からも、医療現場の混乱を招いてしまうという。
自分自身の命を守るために、そして医療崩壊を起こさないためにも、ワクチン接種会場でのこまめな水分補給や保冷剤、氷、冷たいタオルの持参など、一人ひとりが熱中症を予防していきましう。