米国のメリーランド大学で今月上旬、遺伝子操作したブタの心臓をヒトに移植する手術が世界で初めて行われ、話題となった。
移植を受けたデヴィッド・ベネットさん(57)は、末期の心臓病を患っており、今回の手術が命を繋ぐ最後の望みだった。長期的な生存が可能かどうかは未知数だが、画期的な手術の成功例として、世界中にその名を知られるに至った。
そんな祝福ムードの中、ある女性が彼の過去についてBBCに告発し、波紋を呼んでいる。
「みんなベネットをヒーローやパイオニアのように扱っていますけど、あの男はそんな人間じゃありません」
こうBBCの取材に対して語ったのは、レスリー・シューメイカー・ダウニーさんだ。
告発した内容は、ベネット氏が1988年、自身の妻がレスリーさんの弟・エドワードさんの膝に座っているのを見て激しく嫉妬し、持っていた刃物でエドワードさんの背中を何度も刺したというものだ。
当時、ベネット氏は暴行と武器の所持で有罪となり、禁固10年を言い渡された。エドワードさんは一命は取り留めたものの半身不随となり、2007年に亡くなったという。
「私の次女が、『ママ、この人、エドおじさんを刺した人だよ』とメッセージを送ってきて、初めてニュースを知ったんです。あの男が心臓を受け取ったことに腹が立ってしまって」と、レスリーさんはBBCに対して語っている。
メリーランド大学医療センターはNew York Timesに対して、「病院や医療機関は、その門をくぐった全ての患者に対し、医療上の必要性に基づいて救命処置を行うという厳粛な義務を負っています」とコメントした。
またBBCは、移植チームも「過去の犯罪歴は、治療を拒否する理由には決してなり得ない」と明言したと伝えている。