住んでいた場所は違っても、年齢が近ければ「そうそう! わかる」って盛り上がれるのが、青春時代、カラオケでよく歌った曲の話。活躍する同世代の女性と一緒に、“あのころ”を振り返ってみましょうーー。
■今でも解釈の幅が広がり続ける名曲
「松田聖子さんの曲は、デビュー当初は大人の恋愛への憧れとドキドキ感、次第に失恋の胸の痛み、そして失恋が美しい思い出へと変化していくことを歌った『SWEET MEMORIES』(’83年)へと、ファンとともに大人の女性の歌に成長していきました。そして’86年、聖子さんの13枚目のアルバム『SUPREME』に収録されたのが『瑠璃色の地球』です。歌詞は恋愛要素も感じさせますが、『地球』というタイトルに、荘厳な曲調も相まって、単なる恋愛を超えた、もっと広い意味での愛や希望を感じさせます」
そう話すのは、世代・トレンド評論家の牛窪恵さん(54)。
『瑠璃色の地球』の作詞は松本隆、作曲は『風立ちぬ』(’81年)のB面曲『Romance』や井上陽水の『少年時代』(共作・’90年)を手がけた平井夏美(川原伸司)。
レコーディング時、聖子は妊娠中だったといわれている。
「だからこそ、その歌声からは懐ろの深い、無償の愛が感じられるのではないでしょうか。’80年代後半はバブル特有の拝金主義時代とも言われ、“造っては壊す”や勝ち組・負け組があからさまな競争社会でもありました。ゆえに、余計にこの曲が人々の心に染み入ったのかもしれません」
NHK紅白歌合戦では出産後初めての出場だった’86年に続き、’01年、’20年にも同曲が歌われた。
「’01年のときは、かつて交際の噂が報じられたシンガーソングライターの原田真二さんがピアノで伴奏したこともあり、話題になりました」
その後、多くのアーティストに愛され、辛島美登里、沢田知可子、広瀬すず(アニメ映画『打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?』の劇中歌)らがカバーしてきた。
とりわけファンを驚かせたのは、中森明菜がカバーアルバム『ZERO album~歌姫2』(’02年)で同曲を歌ったことだった。
また’10年4月には、宇宙飛行士の山崎直子さんの、国際宇宙ステーションでの“目覚ましソング”に選ばれた。
「さまざまなアーティスト、さまざまな場面によって歌い継がれ、時代の移り変わりとともに『社会貢献』『ロハス』『貧困と格差』『環境問題』など、解釈の幅も広がりました。40年近く前の曲ですが、現在、国際的に提唱されているSDGsの理念にも通じます。まさに聖子さんの代表曲といっても過言ではないでしょう」
【PROFILE】
牛窪恵
’68年、東京都生まれ。世代・トレンド評論家でマーケティングライターとして『ホンマでっか!?TV』フジテレビ系)など多数の番組で活躍