「新型コロナワクチン接種完了後、2~3カ月で新規感染する方が、かなり出てきています。65歳以下で基礎疾患がなく、3回目接種を完了した方でも、『自分はコロナウイルスに感染しているかもしれない』という意識を持ちましょう」
こう話すのは、高知総合リハビリテーション病院院長で感染制御ドクターの小川恭弘先生だ。
新型コロナワクチンは「接種後4~5カ月で感染予防効果が薄れてくる」とされるが、その前段階でも感染リスクがあるようなのだ。よって無症状の感染も含めれば、私たちは「つねに自分が感染しているつもり」で行動すべきだと、小川先生は説く。
3日、1日の新規陽性者数が24万9千830人で過去最多となり、第7波が猛威を振るうが、岸田政権が行動制限する動きは見られない。こうして緊急事態宣言やまん延防止等重点措置のない夏休みを迎えるのだが、小川先生は、「とくにお年寄りや、基礎疾患のある方の存在を忘れないで」と訴える。
発表されている厚生労働省の感染者動向(8月2日時点)の「性別・年代別重症者数」では、男女ともに70代以上の多さが顕著だ。現在も重症者の大半が70代以上の高齢者である状況は変わらない。
「高齢の両親のいる故郷に里帰りするなどという行動は、『うつしに帰る』ようなもの。親御さんや親戚が『いま会っておかなければ、もう会えないかもしれない』状態であるほど『感染したら重症化しやすい』と考えてください」
■やむをえず帰省する際の夏の帰省7つの心得
【1】「自分は陽性者」というくらい慎重に行動する
「『ワクチン接種しているから私は大丈夫』という過信からか、鼻を出してマスクをしている人を見かけますが、誤った感染予防です。感染予防対策とは『自分がうつらないため』以上に『他人にうつさないため』にするもの。肝に銘じて、マスクすべき状況では『鼻までしっかりマスク』をしてください」
【2】ワクチンは可能なら3回受ける
「ワクチン接種後5カ月もたてば、予防効果は薄れてきます(前述)。よって3回目のワクチン接種をして、さらに(予防効果が高まるとされる)2週間ほどたってから帰省するようにしましょう」
【3】実家に滞在する場合は「屋内の外出先」と同じ感覚で
「実家に高齢者や基礎疾患のある方がいる場合は、実家に泊まるのはNGです。実家近くの宿泊施設などを探しましょう。高齢者や基礎疾患のある方がいなければ泊まっても構わないと思いますが、同居家族ではありません。『外出先で人に会うつもり』での行動を心がけましょう」
基本的に、発熱などがない状態で「マスクをし、手指消毒をする。換気をする。そしてソーシャルディスタンスを保つ」行動を。
【4】家族全員ではなく少人数で帰る
「高齢の親御さんや、基礎疾患のある方に会いに帰省する場合は、3人以上の一家で帰るのはNG。一度に1人か2人と、最少人数にとどめるべきです」
【5】食事は「マスク会食」で
「食事も、高齢者や基礎疾患のある方との同席はNGです。高齢者や基礎疾患のある方がいない場合、食事の目安は、『マスク会食』です。食べるときは『黙食』で、話をする際には『マスク着用』を実践しましょう」
現在の濃厚接触者の定義は、「マスクなしで1m以内の距離で15分以上の接触がある場合」となる。これに該当しない飲食となれば、やはり「マスク会食」が望ましいルールとなるだろう。
【6】近所へのいちばんの心配りは「挨拶しないこと」
「実家のご近所まわりには、ついつい挨拶したくなりがちですが、この夏は『挨拶しない』のがいちばんの心配りです。直接、ご近所と面談するのは、『コロナをうつす行動』だと認識してください」
【7】家族が施設や病院にいる場合、直接は会わないこと
「病院や介護施設などに、入院・入所している方への直接面会は、避けてください。入院しているご家族のみならず、ほかの患者さんに感染させてしまったり、院内感染の恐れがあります。いまは窓越しの面会や、ビデオ通話でのリモート面談などもありますので、必ず事前に病院や施設に相談しましょう」
最後に、第7波到来の中での夏休み、私たちの心がけについて、小川先生がアドバイスをくれた。
「コロナ禍3度目の夏は、私たちの対策の焦点が定まってきたともいえます。ズバリ『高齢者、基礎疾患のある方を守る』ことです。手指消毒やマスク着用の徹底・継続に社会が順応してきたのは、素晴らしいこと。収束に向けて、希望は捨てずに過ごしましょう」
高齢者や、基礎疾患のある人にやさしいコロナ対策こそ、家族を守る最大の“自助”となるのだ。